SALON COLUMN

カレーとワインの合わせワザ

2016.11.01



カレーとワインの合わせワザ

カレーとワインの合わせワザ


 猛暑の日には、なぜかムラムラと辛いモノが食べたくなる。この辛いモノ衝動にかられると、私は即、近所のタイ料理店に行き、「トムヤムラーメン」を注文する。辛味スープのトムヤムクンをベースにしたこのラーメンを、冷房のないテラス席で汗をダラダラ流しながら食べると、老廃物が体からどんどん出て行くようで爽快な気分になれるのである。


 トムヤムラーメンに続く夏の辛味定番は、やっぱりカレーだ。私は夏になるとよくカレーを作る。余ったら小分けして冷凍したり、うどんにかけてみたり……。大鍋で一度作っておけば、何度かに分けて食べられるのも、横着者にとってはありがたい。


 さてそんな辛味ネタを弟と語り合っていたら、「カレーと相性のいいワインは何だろうね?」という話になった。以前『神の雫』では、キムチと合うワインを探すストーリーをやったが、カレーもまた、ワインと合わせるのが難しい食材のひとつだ。辛い味というのは非常にインパクトが強く、例えば繊細な味のブルゴーニュワインなどとは、カレーと飲むと複雑さも深遠さもかき消されてしまう。


 ちなみにカレーに合うとよく言われるのがアルザス地方の「ゲヴェルツトラミネール」という甘口白ワイン。確かにこのワインは甘口ながらぴりっと胡椒のような後味があって、味のインパクトもカレーに負けてない。値段もお手頃で、二千円台でもけっこう美味しいものが見つかる。


 また、穴馬として私がお薦めなのは、ドライで辛口のマルサネ村のロゼワインだ。その代表的な1本である『ロゼ・ド・マルサネ・ドメーヌ・クレール・ダユ』を、ランチタイムに中華風カレーと合わせて飲んでみたら、これが予想外にイケる。カレーもワインもお互いを引き立てている感じで、食欲が昂進した。マルサネ村のロゼの生産量は決して多くないが、さっぱりと辛口で、私は好きである。値段も三千円未満だから、興味のある方はぜひカレーと合わせてみてほしい。


 こんな話もある。私が通っている美容院のオーナー氏は、ワイン好きの面白い方だ。彼はある時、カレーうどんに合うワインを探求してみたくなり、世界中のさまざまな種類の赤ワインをカレーうどんに合わせてみたという。「そうしたら、サンジョヴェーゼがめちゃめちゃよく合うんですよ。ワインもうどんも止まらなくなります」。なるほど、サンジョヴェーゼ特有のビターチョコの香りは鍋の底にこびりついた焦げカレーの風味に似ているし、ピリッとした後味も共通している。試しに私もカップのカレーうどんと合わせてみたが、これだとカレーの奥行き感がやや足りない。できれば鍋をつかって、ちょっとカレーを焦げ気味にして、サンジョヴェーゼはあまり濃厚でないミディアムボディのものを選ぶといいかもしれない。


 カレーには合わないといわれるのがメドックなどフルボディの濃厚な赤ワインだが、カレーの味を調整して、ワインに「歩み寄らせる」という手もある。例えばカレーを作るときコップ1杯くらいの濃厚な赤ワインを加え、シチューのようにしっかりと長時間煮込む。煮詰まるとなかなかオツな味で、赤ワインの風味がいい感じに残り、メドックのワインとも、まあマリアージュすると思う(ただし、カレールーは辛口にしないほうがいい)。


 カレーのような煮込み料理はナベ料理同様、何を混ぜても基本OKなのだから、パイナップルを加えてトロピカル風にして、同じ風味を持つローヌの白ワインと合わせてみたりなど、自己流で工夫してみるのも一興だ。このお盆休みは皆さんもぜひ“カレーとワイン”で汗をダラダラ流しつつ、暑気払いを。

神の雫作者のノムリエ日記 2009年8月7日より

■今回のコラムに登場したワイン

    • ゲヴェルツトラミネール
  • ロゼ・ド・マルサネ・ドメーヌ・クレール・ダユ



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