SALON COLUMN

ヒッピー、クラブ、そしてワイン❸

2020.05.20

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ヒッピー、クラブ、そしてワイン❸

イビサとフェルメンテーラはフェリーで結ばれています。所要時間は船会社によって異なり、28〜60分です。午前中の真っさらな日差しの中、潮風を受けながらデッキで水平線を見るうちにフォルメンテーラの港に着きました。



イビサ港を出港するフェリー。



フォルメンテーラの港。


フォルメンテーラ島は鯛の鯛(硬骨魚の骨の一部、形状が鯛に似ていることからそう呼ばれる)のような形をしています。イビサ島と比べると、その規模感がわかりやすいでしょう。

イビサ島:面積/571.6km2、最高標高/475m フォルメンテーラ島:面積/83.24km2、最高標高/119m



丘の上のレストランからの眺望。



〈マリ・マヤンス〉社のハーブ・リキュール「パロ」。同社はフォルメンテーラで創業し、イビサに移った。


フォルメンテーラには2つのワイナリーがあります。そのうちの1つ〈テラモル〉を訪ねました。

港からワイナリーへの道中、道の両側に見えたのはイチジクの木とウチワサボテンでした。シーズンにはこのサボテンの実を食用にします。グァバのような甘い味がします。イビサのクラフトジン・メーカーではこの実がボタニカルの1つとして使われていました。

丘陵地に入ると、松とサヴィーナ(檜の仲間)の林が広がり、その頂上付近にブドウ畑が広がっていました。ワインメーカー、ホセ・アバルデ・ピントス氏が案内してくれました。



実直そうな印象のホセ・アバルデ・ピントス氏。


「2000年設立の家族経営のワイナリーです。それまで島には商業的なワイナリーはなく、農業と漁業が主な産業でした。カタルーニアの新聞社のオーナーだったハビエル・モール氏がこの土地のユニークな環境でワインを造ることを目的として創業したものです」



フォルメンテーラは「鯛の鯛」のような形をしている。


有機栽培を実践する12haの自社畑に加え、契約畑(2ha)からのブドウも仕入れて使うとのこと。契約畑には樹齢50年を超える古木もあるといいます。われわれの目の前にあるブドウ木はメルローとのことでしたが、収穫直後だというのに、葉は縮み、縁が黄変していました。「ここは年中強い風が吹き、非常に乾燥しています。風にも土壌にも塩分が含まれているので、ブドウに取っては生易しい環境ではないのです」



乾燥によるストレスを感じさせるブドウの葉。


商業的にワインが造られるようになったのは最近のことですが、イビサ同様、この島にもフェニキア人がブドウ木を持ち込んだという古い歴史があます。いにしえの人々は、この厳しい環境がブドウに程よいストレスを与えることで、良質の果実を実らせることを知っていたのでしょう。



〈テラモル〉のボデガ。


ソーラーパネルを屋根に敷きつめたワイナリーのテラスで試飲をさせてもらいました。

「サヴィーナ2018」は、ヴィオニエ主体でマルヴァジア、ガルナッチャ・ブランカなどをブレンドした白。花と青草の香りに微かに松脂のトーンが交じります。軽快で、日の高いうちから楽しめそう。



白とロゼ。背景になっている石垣に使われているのがこの島独特の赤い石。畑の表土の下にはこの石の層があり、その下に石灰岩の基盤がある。


「ロザ・デル・マル2018」は、メルロー、モナストレル、カベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドしたロゼ。花とドライトマトのアロマがあります。これも口当たりは軽快。冷やしてビーチで飲むのに良さそうです。



「エス・ビロト2016」(左)と「エス・モネスティル2015」(右)


「エス・ビロト2016」は、メルローとカベルネ・ソーヴィニヨンのブレンド。スミレとカシスの香りが品種特性を良く表していますが、タンニンは細かく、スルリと喉を降りて行きます。ワイン名は島で見られる海鳥の名前から取ったそうですが、確かに「地」よりも「空」を思わせるワインかもしれません。

「エス・モネスティル2015」は、樹齢50年を超える自根(虫害対策の接木をしていない)のモナストレル100%で造った赤。スミレの花、鉄のニュアンスに樽由来のチョコレート、バニラ、リコリスの香りが交じり、キュートな印象に心を惹かれます。

ブドウ品種の構成を見ても、樽の使い方など醸造上のアプローチを見ても、このワイナリーはまだ試行錯誤の途上にあるという印象を抱きました。テロワールはお隣のイビサとは明らかに異なるので、そのうちにもっとフォルメンテーラらしさが前面に出たワインが登場する予感があります。



再びイビサへ。


滞在最後の夜、イビサで地元の人たちからぜひにと勧められた郷土料理を食べに行きました。島の北側の小さな入江に面したレストランの名前は「ポート・バランサット」、料理の名前は「ブイット・デ・ペイス」。ぶつ切りにした3種の魚をジャガイモとともに煮て、アイオリソースをかけて食べるシンプルな漁師料理でした。調理の過程で出るブロス(ブイヨンのこと)で米を炊いたパエリアのようなものがセットになっていました。



イビサの評判店「ポート・バランサット」。



地元の人が「料理の名前を聞いただけで涎が垂れる」と絶賛する「ブイット・デ・ペイス」。イビサのロゼとの相性は満点。


僕はこの料理にイビサの「イビスクス・ロゼ」を合わせましたが、まさに垂涎という言葉がふさわしい、見事なマリアージュでした。


Photographs by Yasuyuki Ukita
Special Thanks to Cámara de Comercio Hispano Japonesa(日西商工会議所)




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