SALON COLUMN

真冬にシャブリを⓫

2020.04.17

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真冬にシャブリを⓫

真冬に収穫(取材)したシャブリの果実(成果)を同じ季節に味わっていただこうと始めたこのシリーズでしたが、暦も実際の陽気もすっかり春になってしまいました。この旅の最後は、ワイン観光のディステーションとしてのシャブリの魅力についてお話ししたいと思います。



〈ドメーヌ・ロン・デパキ〉のシャトー。


パリから南東へ車で2時間半ほど。車窓の麦畑や菜の花畑にブドウ畑が混じるようになると、そこはもうシャブリです。町としてのシャブリは人口2300人ほどの小さな町で、四方を丘陵地に囲まれています。丘陵地の大半はブドウ畑、中でも町の北東側にある急斜面にはグラン・クリュの畑が連なります。ワイン好きにとっては夢のような風景です。



目抜き通りと路地。


町の目抜き通りにはこの地方独特の木骨造りの家屋兼商店が立ち並んでいます。ワインショップ、シャルキュトリーの店‥‥レトロな書体の看板に旅人の心が浮き立ちます。



〈ドメーヌ・クリストフ・カミュ〉のショップの前に立つ経営者ファミリー。


そんなシャブリの町を中心に周囲30キロメートルほどの圏内には「フランスの美しい町」に選ばれるような風光明媚な村が点在します。それらには評価の高いガストロミー・レストランも多く、シャブリからランチやディナーのために衛星都市へ足を伸ばすのは「旅の中の小さな旅」という感じで、楽しいものです。

さらには、この地域のワインの発展と切っても切れない縁のあるカトリック、シトー会の拠点ポンティニー修道院などの史跡もあります。パリから近くて、地域全体がコンパクトにまとまっていることが観光地としてのシャブリの強みです。



近郊最大の町、オーセールのレストラン〈ル・ブルゴーニュ〉で、仔牛のリードヴォーにシャブリを合わせる。


シャブリにワイン観光の波が押し寄せたのは5年ほど前のこと。2015年に「ブルゴーニュのブドウ畑とクリマ」がユネスコの世界遺産に登録されたことがきっかけになったと言われています。以来、来訪者の数は20%も伸びました。



〈ドメーヌ・ジャン=マルク・ブロカール〉では、剥き出しの土壌が見られる。



〈ドメーヌ・ジャン=マルク・ブロカール〉が市街地に経営するジット。


シャブリのワイン観光の盛り上がりには日本人も一役買いました。レストラン〈オ・フィル・デュ・ザング〉は、東京・六本木の〈ラトリエ・デュ・ジョエル・ロブション〉、パリの〈ル・ムーリス〉などの名店でも活躍した永浜良シェフがパートナーのフランス人と14年6月オープンした店。



〈オ・フィル・デュ・ザング〉。



永浜良氏。


日本人らしい感性を加味した料理が評判で、地元ワイナリー関係者が利用することも多く、ビストロスタイルの2号店「ル・トワ・ブルジョン」も町内に開店し、永浜氏は「観光地シャブリ」に欠かせない存在になりました(現在、永浜氏は店を売却し、帰国して大阪のホテルの料理長の職に就いている)。



日本人の感性が光る料理。シャブリとの相性も良好。



イカ墨を使ったブルグル。


セリーヌ・ゲゲンさんはシャブリの主力ワイナリーのひとつで、早くからワイン観光に力を入れてきた〈ジャン=マルク・ブロカール〉のファミリーの出身で、結婚前は家業のツーリズム担当をしていた人です。現在は元同僚から夫になったフレデリックさんと新たなワイナリー〈ドメーヌ・セリーヌ・エ・フレデリック・ゲゲン〉を構え、自分たちのワインを造りつつ、ツーリスト用のテイスティングルームを整え、自宅隣りの借家を改装してジット(長期滞在者向けの貸別荘)を経営するなど、ツーリスト対応にも力を入れています。



〈ドメーヌ・セリーヌ・エ・フレデリック・ゲゲン〉



セリーヌさんが手がけたジット。


「どんな環境でワインが生まれているかを見てもらえば、きっとシャブリがもっと好きになってもらえると思います。ワインの飲み手と直接会ってお喋りすることで、私たち生産者のモチベーションも上がりますしね」と、セリーヌさん。訪ねる側にとっては、造り手の人柄に触れることの魅力も大きいと思います。



ポンティニー修道院。修道僧たちの献身がシャブリの基礎を築いた。


シャブリのワイン観光熱をさらに高めそうな話題があります。地域のワイン文化を立体的に紹介する施設「シテ・デ・ヴァン・ド・ブルゴーニュ」(ボーヌ、マコン、シャブリの3箇所)が2021年に開館することが決まったのです。パリからシャブリを訪れる人の半分は日帰り、残りの半分は宿泊していくそうです。パリを訪れるプランがあったら、旅程を数日余分に取って、ぜひシャブリに出かけてみてください。


Photographs by Taisuke Yoshida,
Special Thanks to BIVB(ブルゴーニュワイン委員会)




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