SALON COLUMN

テロワールと天地人③

2019.12.11



テロワールと天地人③

そもそも 香りって、アロマって何でしょう。

香り、匂いの本質を、すこし考えてみましょう。

アロマとはフィトンチッド、つまり森が放つ芳香成分とほぼ同じ。
植物が、植物や動物、微生物に対して、誘引(こっちにおいで!)、忌避(こっちには来るな!)という香りの情報の信号です。
それを人が、「おすそ分け」という形で、こっそり、もしくは堂々と頂いてしまっているわけです。
アロマ、精油の使用部位 ― 枝なのか幹なのか、葉なのか、花なのか、果実なのか、それは熟しているのか否か…により、その植物が何を考えているか想像すると、アロマの成分の生物学的意味も伝わってくると思います。

ワインの香りの分類学の最右翼 ― ソムリエだったり、シニアエキスパートだったり...少しずれて日本酒ソムリエ、酒ディプロマ、きき酒師、調香師さん、がその香りのプロフェッショナルです。
ワインの勉強を始めると、LE NEZ DU VIN JEAN LENOIR が、先ず目にとまります。54本の香りのエッセンスに、その回答があるといった、もっとも高級な香りの勉強カード、勉強カルタです。




アロマセラピストも調香師も涙が出るほど感激する香りの学びのプロダクツです。

この正解を元にソムリエはより適切なテイスティングコメントをします。話しは少し外れますが、テイスティングコメントを考える事は、最近、医療・医学の「見える化」の先にある「言える化」には非常に役立ちます。
また香りを嗅ぐ能力が低下すると、認知症が始まるとも言われています。 しかし私は 香りを学んでいる割には鼻が効く方ではないので、残念ながら全く正解にいたりません。

『ワインの香り』(東原和成氏他)の日本のワインアロマホイールとアロマカード(香りのカード)を使ってワインの勉強をするツール、アイテムがあります。
(http://www.kohyusha.co.jp/books/item/978-4-7709-0073-9.html) また、『The WINE』(マデリン・バケット、ジャスティン・ハマック著)でもいわゆる香りの円環を使って、その香りの特徴を説明しています。
(https://www.nihonbungeisha.co.jp/book/b329407.html)

どちらも香りの「見える化」、さらには「言える化」の強力な練習アイテムとなります。

さて、そもそも 私が、このコラムを担当するきっかけとなったのが、自書『脳に効く香り』で、脳に効く香りをもう一度、極々単純に説明しています。 さて、難しい話しをしないというexcuseとして、「オッカムの剃刀」という考え方があります。私も共感するのですが、ある仮説は最も下等な、単純な理論で説明すべき、という論理があります。
心理学や精神科からアロマを分析的にとらえる事ももちろん必要ですが、逆に、香りを、アロマセラピー、精油 を 人の脳、特にこころに対する効果効能から、より単純化して学んでいくうちに、私は、最終的に3つのモノアミン=(脳内伝達物質)ノルアドレナリン、セロトニン、ドパミン で 説明できる!と考えました。

皆さま、ここだけ、押さえてください。
これだけで、大丈夫です。
色々な香りを人のこころの作用により分類していく場合、人の「こころ」部分、感情とか気分を調節する脳内伝達物質は

元気=ノルアドレナリン
安心=セロトニン
満足=ドパミン

の3つのモノアミンです。



また、その「こころ」を助ける嗜好品が、

元気=ノルアドレナリン=コーヒー
安心=セロトニン=タバコ
満足=ドパミン=お酒

となります。

朝のカフェイン、昼の一服のニコチン、夜のアルコール、で人は1日の自律神経のバランス調整を知らず知らずにしています。

追記、ここで元気はわかると思いますが、 安心と満足の違いは、タバコを吸って運転はできますが、お酒は絶対ダメですね。その違いです。
冷静さとワクワクさ、の違い、とも言えるかもしれません。

さて、香りの分類を元気、安心、満足で考えましょう。
改めて、日本のワインアロマホイールを参考に、香りの分析を、勝手に統合してみましょう。

柑橘系 ― レモンやオレンジ、グレープフルーツは、元気の香り
植物ではハーブや草は、安心の香り
甘い果実や花(フローラル)は、満足の香りとなります。

アロマで言えば
元気、オレンジ、グレープフルーツ



安心、ペパーミント



満足、ラベンダー



ここで、もう少し実例をあげましょう。

分類学から香りをより詳細に、分析的に考えると、反対に、香りが、人の感情、気分に作用するから、逆方向に見てみると、香りを好き、嫌いではなく、この香りは元気、その香りは安心、あの香りは満足、と3つに単純化して、考え、感じることも、香りを理解して愉しむ一つの方法かもしれません。
いずれにしても、香りの表舞台は植物系の香りで、動物系の香りが意外に少ないと思います。

動物を探す指標は、香りから味・旨みになります。
次回は、旨みの話しをしてみましょう。



医療法人社団 湘南太陽会 理事長 鳥居 伸一郎 東京慈恵会医科大学卒業。平成4年横浜市金沢区に「鳥居泌尿器科・内科」を開業。その後、横浜市内に3つの分院を開業。
平成26年に統合医療研究所「T-LAB.」を設立、香りと音の機能性を中心に幅広く臨床試験を行う研究活動を行っている。さらに、株式会社 Music & Aroma Intelligenceを設立し、縦横を越境した多分野から五感により音楽や香りを考究し、真の健康や幸せを求める人々に向け、情報の提供活動を行っている。
著書に「本当に健康になれる医療との付き合い方」(幻冬舎MC)、「脳に効く香り」(フレグランスジャーナル社)がある。




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