SALON COLUMN

“C”をめぐる冒険❷

2019.07.13

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“C”をめぐる冒険❷

プリオラートを取り囲むようにして“C”の字形に広がるモンサン。そんなユニークな形になった経緯についての話の続きからでしたね。ヨーロッパ各国におけるワイン法上の区分の策定は、往々にして地元の政治的な力関係の上に成り立っていて、多くの人に取材をしてもなかなか真相にたどり着けないことがあります。モンサンとプリオラートの関係についても同様で、取材中に何度か現地の関係者に訊ねてみましたが、結局、合点のいく答えには出会えませんでした。最もそれらしい答えは、「リコレリャ(スレートでできた土壌)であればプリオラート、それ以外の土壌ならモンサン」というものでしたが、モンサンにも一部ですがリコレリャが見られ、それを売りにしている生産者もいます。これでは答えになっているとは言えません。



モンサン北東部、シウラーナの景観。


モンサンのワインは、全体的に好もしい果実味を持ち、親しみやすい味わいのものが多く、また価格的にもプリオラートの一部のワインに見られるような、超高価格帯のものはありません。デイリーに楽しむことができるのはモンサンの大きな魅力です。前回も述べたように、プリオラートとモンサンの両方でワインを造っている造り手もおり、技術やワイン造りに対する姿勢において、両者の間に違いはないと言えます。



この辺りで標高は730mほど。


では、モンサンのアイデンティティーとは何なのでしょう? 他の産地との比較は一旦止めて、モンサン自体の横顔をつぶさに見ていきましょう。 米紙『ニューヨークタイムズ』はモンサンについて、「一から創り直された産地だ。新世代の生産者たちはいきなり世界を相手にする戦いの場に放り込まれた」と書いています。また、スペインで最も権威のあるワイン・ガイドブック『ギア・ペニン』は「カタルーニャで質的に最も成長した産地で、全てのワイナリーが努力した結果、われわれが“モンサン・ブランド”について語ることができるようになった」と称賛しています。近年、急速に評価を高めているモンサンは、ワイン界の昇り竜的存在なのです。



シウラーナの街角。


DOモンサン(DOは原産地呼称のこと。産地の名称を守り、そこで生産されるワインの品質を保証する)は17カ村からなり、ワイナリーの数は53軒。全体のブドウ畑の広さは1,815haで赤ワイン用のブドウの作付け面積が94%を占めます。赤ワインに特化した産地であることに間違いはないですが、限られた生産量ながら白ワインにも品質的に優れたものがあります。



血入りソーセージ、ブティファラ・ネグラと豆、イモのグリル。


栽培されているブドウ品種は、赤ワイン用の代表格が、ガルナッチャ・ネグラとカリニェナで、この2品種で全体の収穫量の約65%を占めます。他には、ウル・デ・リェブレ(テンプラーニーリョ)、シラー、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンなど。白ワイン用は、ガルナッチャ・ブランカとマカベオの2つで90%以上を占めます。ガルナッチャ・ネグラとカリニェナについては回を改めて詳述します。



ガルナッチャ・ネグラ、カリニェナに国際品種をブレンドした瑞々しい味わいの逸品、「ベヌス ラ・ウニベルサル2015」。



ガルナッチャ・ブランカにガルナッチャ・ネグラを15%混ぜて造る「コムニカ ラ・プア」。花の豊かなアロマと厚みのあるミネラル感。


次回は、モンサンの絶景を眺めながら、この土地の最大の個性と言える、土壌や地勢について説明したいと思います。 (つづく)


Photographs by Yasuyuki Ukita
Special thanks to Consejo Regulador DO Montsant and Yuko Satake



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