SALON COLUMN

地球上で最も孤立したワイン産地❹

2019.02.25

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地球上で最も孤立したワイン産地❹

一昨年の5月、〈ヴァス・フェリックス〉の創業50周年を記念して、アイコン・キュヴェ「トム・カリティ2013」がリリースされました。著名なアメリカ人ワイン評論家ジェームズ・サックリング氏はこのワインに99点を付け、「地域の個性を教科書的に表現するものであり、まことに誘惑的である」と激賞しています。

「トム・カリティ2013」

同年7月に〈ヴァス・フェリックス〉を訪ねた際、この「トム・カリティ2013」を含む9アイテムを、ワインメーカーのマイケル・ラングリッジ氏の導きで試飲しました。プレミア・レンジの「シャルドネ2016」はパワフルでクリーミー、引き締まった酸が余韻を長引かせます。同「シラーズ2014」はスパイスとハーブのワイルドな香り。後口に残る清涼感が特徴的。全てのアイテムに共通するのはスモーキーでやや湿ったトーンです。ラングリッジ氏によると、それこそはこの土地の地味であり、また07年から使っている自然酵母によるキャラクターだろうとのこと。

テイスティングの準備をするラングリッジ氏。

「カベルネ・ソーヴィニヨン2014」は黒スグリやセージ、スモークをかけたマッシュルームの香りにバラのドライフラワーのトーンが複雑味を添えます。深みと親しみやすさが共存する、ちょっと不思議な気分にさせるワイン。食欲を刺激するワインでもあります。この銘柄は1972年の初ヴィンテージから毎年造られている、“ヴァス・フェリックスの魂”と呼ぶべきものです。

プレミア・レンジの3アイテム。右から、「シラーズ2014」、「カベルネ・ソーヴィニヨン2014」、「SBS2016」。

このワインを飲んだ時、特に印象に残ったのが、先述の「親しみやすさ」でした。その出どころが土壌なのか、クローンなのか、あるいは他の何かなのかが気になりました。ふと、手もとにあったテクニカルシートを見て、僕は「これだったか!」と思いました。使用品種の欄に、カベルネ・ソーヴィニヨンに加えて、マルベックが11% 、プティ・ヴェルドが3%と記されていたのです。あんこの親しみやすさに通じるキャラクターはまさにマルベックのそれでした。

1972年、73年のラベルには「カベルネ・ソーヴィニヨン」の文字の下に小さく「マルベック」の文字が。

最後にいよいよ「トム・カリティ2013」が登場です。セパージュ(品種構成)はカベルネ・ソーヴィニヨン76%、マルベック20%、プティ・ヴェルド4%。ここにもマルベックが! もちろんカベルネ・ソーヴィニヨンとマルベックは1967年に植えられた“伝説”の区画のぶどう木から。フレンチオークの樽(新樽率は39%)で19カ月間熟成。カシス、なめし皮、ローリエなどの複雑な香りの中から立ち上がるホロリと甘く、人懐っこいトーンは、まさにマルベックの美点そのもの。このワイナリーの真価が実は良質のマルベックの存在に支えられていたことがわかりました。

マルベックの古木が植えられた区画。

マーガレット・リバーのワインに関して前からずっと気になっていた疑問をラングリッジ氏にぶつけてみました。「マーガレット・リバーのカベルネ・ソーヴィニヨンに時々見られる松葉を噛むようなえぐみはどこから来るのか?」この疑問に対するラングリッジ氏の回答は以下のようなものでした。 「1、2月、つまりのこちらの盛夏の時期の気温が低いと、そういう風味が出るようです。逆に例年よりも暖かい季節には、それは出てきません。もう一つは、クローンによるということ。マーガレット・リバーでは多くのワイナリーが“ホートン・クローン”を採用していますが、それ以外のクローンだと青味が強くなるようです」

セラードアのスタッフ。

マーガレット・リバーのカベルネ・ソーヴィニヨンを語る時、忘れてはならないホートン・クローンの話は後の回に詳しくすることにしましょう。

(つづく)

Photographs by Yasuyuki Ukita



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