SALON COLUMN

もう一つの高貴な泡、フランチャコルタ❽

2018.12.04

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もう一つの高貴な泡、フランチャコルタ❽

「バローネ・ピッツィーニ」の取り組みは有機栽培に止まりません。07年に竣工した新しい醸造所の建物は環境への配慮とサステナビリティをコンセプトにして設計されたもの。その設計を担当したのは共同経営者の一人で建築家のクラウディオ・ガスパリッティ氏でした。地元の建材を使うことで輸送による二酸化炭素の排出を減らす、醸造所内で使う電気を太陽光発電で賄う、その他、生産工程の全てで温室効果ガス排出の削減が図られています。

通常、ステンレスタンクの並ぶ醸造所内がこれほど絵になることは珍しい。この清潔感はワインの味わいに通じる。


ブレシャニーニ氏と一緒にブドウ畑に立った時、彼はこう言いました。 「今、ここで風によって空気が動いているでしょう? 我々の施設を通る前と比べて、通った後にはCO2の量が減っている、そういうふうになるのを目標に、現在モニタリングをしているところです」  環境に配慮するためだけではなく、ワインの味を良くするために、こういった取り組みをしている。全てはグローバルな品質に至るために欠くべからざるものだ、とブレシャニーニ氏は続けました。

この畑や醸造施設を通ることで温室効果ガスが減るようにしたい、とブレシャニーニ氏は言う。

ブレシャニーニ氏の取り組みはどのようにワインに表れているのでしょう? 6アイテムのテイスティングを通して、その成果を見てみましょう。

左から、「ゴルフ1927」「アニマンテ」「サテン2014」「ナチュール2014」「ロゼ2013」。

⒈「ゴルフ1927」はノンヴィンテージのエントリーライン。セパージュはシャルドネ95%、ピノ・ネーロ5%。スダチや麦わらの香り。明朗でフレッシュ、軽快な印象。まさにゴルフのラウンドの後にグイグイ飲みたいワインです。 ⒉「アニマンテ」はノンヴィンテージのエクストラ・ブリュット。この造り手のフラッグシップ・アイテムです。シャルドネ78%、ピノ・ネーロ18%、ピノ・ビアンコ4%。ブドウは同社が所有するあらゆるブドウ畑からの収穫を使います。そうすることで、「バローネ・ピッツィーニ」の全貌を示そうとしているのです。シュール・リ(澱と共に寝かせる)期間は20〜30カ月。芳ばしい酵母香の後ろから立ち上がるのは白い花やレモネード、干したアプリコットの香り。口の中では爽快感がありながらもたっぷりとした旨味が感じられます。この「たっぷり」や「旨味」は有機栽培のブドウの美点だと思います。 ⒊「サテン2014」。サテンは白ブドウだけで造るフランチャコルタで、ややガス圧を低めにしてあるという説明はすでにしましたね。日本人、中でも女性に人気の高いスタイルです。シャルドネ100%。一部樽発酵。シュール・リの期間は3年間。シトラスと蜂蜜の香りが優美に混じり合います。泡立ちはシルキーそのもの。熟成したシャルドネ特有のナッティなコクがワインに風格を与えています。 ⒋「ナチュール2014」。ドザージュ・ゼロ。シャルドネ60%、ピノ・ネーロ40%。一部樽発酵。シュール・リの期間は3年間。デゴルジュマン後の甘み付け(ドザージュ)を行わない「ノン・ドザージュ」(「ドザージュ・ゼロ」「パ・ドゼ」などの言い方もある)は、現代人の嗜好に合うスタイルとしてシェアを伸ばしています。このワインは標高400m(フランチャコルタでは高標高の部類に属する)の畑のブドウを主体に造られています。この標高の高さがワインのキレに出ています。熟れきっていない青リンゴや白桃の香りが穏やかに立ちます。その奥からはヨードやミネラルのトーンも。寡黙ですがスケール感のあるワイン。 ⒌「ロゼ2013」。ピノ・ネーロ80%、シャルドネ20%。タイプはエクストラ・ブリュット。数時間のスキンコンタクトで抽出された淡い色合いが上品。フルーツよりもバラを思わせるフローラルなアロマが際立ちます。時間と共にカランツ(黒スグリ)のトーンがじんわりと。 ⒍ 「アニマンテL.A.」。今年の4月にリリースされたばかり、生産本数わずか7000本の特別なアイテムです。シャルドネ78%、ピノ・ネーロ18%、ピノ・ビアンコ4%。ノンヴィンテージ。ドザージュ・ゼロ。「L.A.」はロング・エイジすなわち長期熟成を意味します。主体となっているのは2011年のブドウ。シュール・リの期間はなんと70カ月(約6年)。スパイシーでドライ。苦みばしっていながら、愛さずにはいられない、ハードボイルド小説のヒーローのようなワインです。きっと飲み頃はまだ数年先で、その頃には熟れた果実やドライフラワー、焼き栗のトーンが出てくるのでしょう。

新しくフランチャコルタの認定品種に加わることになったエルバマット。晩熟で酸が高いことから温暖化対策の切り札になると考えられている。実際は古くからこの土地に植えられていたブドウ。


テイスティングのアテンドをしてくれた同社スタッフのマルタ・ピオヴァーニ嬢は最後の「L.A.」の印象を「デチーゾ(決然とした)」という言葉で表わしました。この単語に触れた時、僕の脳裏にブドウ畑に立つブレシャニーニ氏の姿が蘇りました。

(つづく)

Photographs by Yasuyuki Ukita



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