SALON COLUMN

もう一つの高貴な泡、フランチャコルタ❻

2018.11.13

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もう一つの高貴な泡、フランチャコルタ❻

“雷に打たれたように”ワインに目覚めた少年が母親の建てた“森の家”で興した「カ・デル・ボスコ」は、今やフランチャコルタのみならずイタリア全体を代表する有力ワイナリーに成長しています。

アルナルド・ポモドーロ作「太陽の門」。

“ワイナリーのゲートは彫刻家アルナルド・ポモドーロが作ったブロンズ製の「太陽の門」です。そこからブドウ畑を貫く坂道を辿ると、屋上に青い狼たちが並んだワイナリーの建物が見えてきます。リサイクル・プラスティックで作られたこの狼の像「ブルー・ガーディアンズ」は、マウリツィオ・ザネッラ氏がクラッキング・アートという芸術家集団に依頼して作らせたもの。左側の芝生の丘に目を転じると、人の頭の上半分が消失したようなショッキングな彫像が。これはドイツの芸術家イゴール・ミトライによる「エロイ・デ・ルーチェ(光の英雄)」という作品です。

イゴール・ミトライ作「エロイ・デ・ルーチェ(光の英雄)」。

施設内に入ってからも一級のアート作品と随所で出会うことになります。ピカピカのステンレスタンクが並んだ醸造所の天井からは巨大なサイがぶら下がっています。これも「止まっている時間の重み」(ステファノ・ボンマルディエリ作)というアート作品。そこには「ワインは芸術と親和するものであり、ワインそのものがアートなのだ」というザネッラ氏の思想が反映されています。

瓶内熟成中の澱の様子を見せるディスプレー。

成功者が芸術作品を買い漁って、見せびらかすことはよくありますが、そういう印象はここでは皆無です。むしろ、これらのアートは醸造工程の一部としてそこに収まっているように見えます。そして、本来は工業的で無機質な醸造機器にすら見る者の魂を揺さぶるものがあるのです。

ブレンド用のタンクもどこか神々しい。

例えば、収穫時にだけ稼動する「ベリー・スパ」という機械があります。これは運び込まれたブドウを水と気泡で一気に洗浄し、風を送って乾かすもので、この技術を導入することで、よりクリーンな果実を得ることができ、ワインの味わいに良い効果を及ぼすだけでなく、SO2の使用も減らすことができるという画期的なシステムです。この「ベリー・スパ」が稼動している様は美しく、背後からオペラのアリアが聴こえてきそうなほど。

稼働中の「ベリー・スパ」。

「カ・デル・ボスコ」のフランチャコルタには各アイテムに共通するクリアで精緻な味わいがあります。清潔な場所で間違いのない方法で造られたワインという安心感があると言い換えてもいいと思います。それが、AI的・工業的な完璧さではなく、「人間の意志」の為せるものであることが、ワイナリー内に配された数々の芸術作品から伝わってくるようなのです。

左上の「ヴィンテージ・サテン2013」はシャルドネ85%、ピノ・ブラン15%。一次発酵はオーク樽で行う。熟したリンゴやメロンの香りが好もしい。

蛇足的な話を一つ。「カ・デル・ボスコ」の女性スタッフは白いシャツにグリーンのパンツというのが「制服」のようです。そして足もとはグッチのスニーカー。スタッフの一人に聞いたところ、スニーカーは会社から支給されるとのこと。グッチとの提携というよりは、オーナー同士の付き合いから導入されたのではないかとのことでした。調べてみると、日本円で8万円くらいするようです。こんなところにもフランチャコルタとファッション界との強い結びつきが表れているのだなと妙に感心してしまいました。

女性スタッフのユニホームになっているグッチのスニーカー。

(つづく)

Photographs by Yasuyuki Ukita, Ca’ del Boco



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