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もう一つの高貴な泡、フランチャコルタ❹

2018.10.18

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もう一つの高貴な泡、フランチャコルタ❹

フランチャコルタのワイナリーを訪ねると必ず見せられるのが、地域の地形と土壌の分布を表した立体マップです。これが実によく出来ていて、フランチャコルタのテロワールが一目瞭然なので、読者の皆さんにも見ていただき、それをもとに話を進めていくことにしましょう。

フランチャコルタ協会が制作した立体マップ。

イタリア北部湖水地方。東端にあるのがイゼオ湖で、フランチャコルタはその南岸に馬蹄の形(北の方を開口部としたU字形)で広がっています。この馬蹄形は何万年も前、アルプスの氷河が土砂を引きずって移動してきた爪痕です。馬蹄形のエッジを成している丘の内側と外側とでは土壌が(そしてワインの質も)全く異なります。

湖と険峻な山々を背景に広がるブドウ畑。

氷河が運んできた土砂は主に丸い石ころで出来ています。丸いのは運ばれた時に石ころ同士がこすりあって、角が磨り減ったから。この石ころに他の様々な堆積物が混じって出来た土壌を「氷堆積土壌」(英語で「モレーン」、イタリア語で「モレニコ」)と呼びます。先ほどの立体マップでオレンジ色や黄色で彩色されているところが氷堆積土壌です。

これも氷河が運んできた石だそうだ(有力ワイナリーの一つ、「カ・デル・ボスコ」にて)

丸い小石が目立つフランチャコルタの典型的な土壌。

この土壌の最大の特徴は水はけが良いこと。以前、このコラムでフランチャコルタの語源はラテン語で「税金免除の地」を表すクルテス・フランカだとお話ししました。水はけが良すぎて、土中に肥料も止まらず、作物が育ちにくい貧しい土地だから、税金を課すのは免除してやろうということだったようです。痩せて水はけの良い土地は、麦や芋は育たなくても、ワイン用ブドウの栽培には好適でした。

カモニカ渓谷とイゼオ湖。

イゼオ湖の湖畔に立つと、左右に険しい山々が聳え、湖が山間の渓谷に形成されたことがわかります。このカモニカ渓谷を通ってアルプスからの涼風がフランチャコルタに流れ込み、ワインにフレッシュな酸とアロマをもたらします。またイゼオ湖の水は陸地の気温変化(夏の猛暑や冬の霜)をほどよく和らげる役割を担います。

「カ・デル・ボスコ」の自社畑の位置を示すジオラマ。手前の小山で氷河の流れが止められた様子がよくわかる。

これらの地理、地質、気候の条件がデリケートなバランスを取っていたことが幸いして、フランチャコルタの地はスパークリング・ワインの産地として短時間のうちに名声を得ることができたのです。

イゼオ湖の名物“淡水イワシ”を使った一皿。

おさらいの意味合いも込めて、フランチャコルタのテロワールをシャンパーニュのそれと比べてみましょうか。フランチャコルタの土壌は氷堆積土壌でしたね。これに対してシャンパーニュの土壌は白亜質の石灰質土壌(ワインにキレとミネラル感を与える)です。シャンパーニュ地方が北緯49度くらいに位置するのに対し、フランチャコルタは北緯45度あたり(日本では札幌が北緯43度)。ブドウが十分に熟すフランチャコルタに対して、シャンパーニュはブドウ栽培の北限に近い土地と言えます。冷涼すぎてスティルワインの生産に不向きなシャンパーニュ地方にとって、スパークリングを極めることは生き残りの為に必須のことでした。それに対して、フランチャコルタはスティルワインでもそれなりの品質のものを造ることができる土地でありながら、あえてスパークリングというスタイルに転換した産地だったのです。

(つづく)

Photographs by Yasuyuki Ukita



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