SALON COLUMN

もう一つの高貴な泡、フランチャコルタ❶

2018.08.29

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もう一つの高貴な泡、フランチャコルタ❶

シャンパン・ファイトという言葉がありますが、イタリアのプロサッカーリーグ、セリエAに所属するACミランが勝利を祝う時に掛け合うのはシャンパーニュではなく、イタリア・ロンバルディア州で造られるフランチャコルタです。同様に、ミラノコレクションの打ち上げパーティでも多くのメゾンが振る舞うのはフランチャコルタ‥‥。今回のグッド・ワインを探す旅は、このイタリアが誇る華麗なるスパークリングワイン、フランチャコルタの世界を巡ります。

フランチャコルタの中でも特に良質のブドウが実ると言われるエルブスコの辺り。

イタリア人は胸を張って、「フランチャコルタはシャンパーニュに比肩する高貴なスパークリングワインだ」と主張します。この言葉の正否を即断するのは簡単なことではありません。両者の間には歴史にも出荷量にも大きな隔たりがあります。シャンパーニュの製法が現在のかたちに落ち着いたのは18世紀のこと。これに対して、最初のフランチャコルタが「シュポン!」と抜栓されて世に出たのは今からわずか60年ほど前の1961年のことです。出荷量は、年間3億本を超えるシャンパーニュに対し、フランチャコルタは1650万本ほど。18分の1という計算になります。

「グイド・ベルルッキ」経営者一族の一人、パオロ・ジリアーニ氏。

ここでもう少し数字の話をしましょうか。フランチャコルタの出荷量のうち、輸出の占める割合は約9%。つまり、90%以上がイタリア国内で消費されています。輸出先のトップはなんと日本で、輸出量全体の20%以上を占めています(参考までに、シャンパーニュの輸出先として日本は第3位)。フランチャコルタにとって日本は上客であると言えますが、それと同時に、日本人にとってフランチャコルタは嗜好に合うワインということになるのかもしれません。



ピュピトルの並ぶ熟成庫。フランチャコルタはシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵を経て造られる。

「フランチャコルタ」という言葉はワインそのものを表すだけでなく、フランチャコルタが造られる生産地域の呼称でもあります。ちなみにイタリア語でla Franciacorta(女性名詞)と書けば「生産地域」を表し、il Franciacorta(男性名詞)と書けば「ワインそのもの」を表します。

夕暮れ時のイゼオ湖。

地理的なことはあらためてきちんとお話ししますが、先にざっくり説明しておくと、フランチャコルタはミラノから東に車で1時間くらい走ったところにあります。イゼオ湖という美しい湖の畔にブドウ畑が広がっています。フランチャコルタの語源は「免税交易地域」を意味するラテン語「クルテス・フランカ」だとされています。11世紀にクリュニー会の修道士たちがこの地にやってきて、税金を免除されたのです。クルテスとフランカをひっくり返すとフランカ・クルテス。ほら、少しフランチャコルタに近づいてきたでしょう? この地のワイン造りは16世紀には行われていましたが、地元消費用で遠くまでその評判が伝わるようなものではありませんでした。

朝のイゼオ湖。湖畔には小さな村が連なり、ツーリズムも盛ん。

「イタリアの奇跡」と、後になって言われることになるフランチャコルタの新たな物語は1958年に始まります。つづきは次回ということにしましょう。

フランチャコルタには飲み手を朗らかにする陽性の力がある。

(つづく)

Photographs by Yasuyuki Ukita



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