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蕪と土佐鴨にパタゴニアのピノ・ノワール

2018.06.19



蕪と土佐鴨にパタゴニアのピノ・ノワール

南米大陸の太平洋沿いに細長く伸びた国、チリ。そのチリのワイン産地が南北に拡大している。私が最後に訪問した10年前のワインマップを見ると、北はリマリ、南はビオビオ・ヴァレーまで。それから数年で北はエルキまで伸び、南は南緯40度を越えてとうとうパタゴニアに達した。

南半球だから南に行くほど寒い。このチリワインのニューフロンティアと呼ばれるパタゴニアに、2006年にブドウを植え付けたのがカサ・シルヴァ。創立1892年の老舗ワイナリーだ。

ブドウ品種には暖かな産地を好むものもあれば、涼しい産地を好むものもある。酸味とフレーバーが大切なリースリングやソーヴィニヨン・ブランなどの白品種、赤品種でもピノ・ノワールなどは、涼しい産地のほうが本来のポテンシャルを発揮する。北、つまり赤道により近い地方でも、チリは太平洋に近づけばフンボルト海流のおかげで涼しいが、首都サンティアゴから南に904キロも下ったパタゴニアは段違い。コルチャグア・ヴァレーの海岸沿いで平均最高気温が23度のところ、パタゴニアは18.5度に過ぎないという。

その極南の自社畑で生まれたワイン「ラゴ・ランコ」シリーズが初リリースされたのを機会に、オーナーのマリオ・パブロ・シルバが来日。東麻布のレストラン「ローブ」でワインペアリングランチが行われた。ペアリングの妙を披露してくださったのは、2015年度のアジア・オセアニア最優秀ソムリエで、2000年の世界最優秀ソムリエコンクール第3位入賞の実績をもつ石田博さんだ。

ラゴ・ランコはリースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワールの3種類。ヴィンテージはすべて2016年だ。

まず石田さんがリースリングに合わせたのはフォワグラとリンゴ。ラゴ・ランコのリースリングは透明感のある美しい酸味に、若干の残糖が感じられるオフドライな味わい。フォワグラはコンフィで、そのオイリーな粘性をワインのフレッシュさがきれいに拭ってくれる。リースリングのもつリンゴの果実香と皿に添えられたリンゴのスライスやジュレがまたマッチする。

ソーヴィニヨン・ブランにはホワイトアスパラガスと雲丹。このソーヴィニヨン・ブランはニュージーランドのものほど青草系や柑橘系の香りが強く出ず、ロワールのそれのように穏やかにまとまっていて、ホワイトアスパラガスやジロル茸の土っぽい風味ときれいに歩調を合わせてくれる。雲丹の甘みやネットリした食感は、ワインのほどよい酸味やサラリとしたテクスチャーとよい意味でコントラストを演出していた。
ピノ・ノワールには蕪と土佐鴨。料理が目の前に運ばれた瞬間、どこに鴨がいるのかと探してしまったが、これこそ石田マジック。鴨のジュをたっぷり含んだ蕪である。チリでも質の高いピノ・ノワールがぼちぼちと登場してきてはいるけれど、このラゴ・ランコのピノ・ノワールはまた独特。ニューワールドにありがちな甘いほどの果実味は影を潜め、フローラルなフレーバーとピュアな酸味が際立ち、緊張感を伴うブルゴーニュ的なタイトさが好印象。この一歩下がった奥ゆかしさが、鴨そのものではなく、鴨のエキスだけを纏った蕪ととてもよくマッチしていたのだ。

惜しむらくはこのラゴ・ランコ、初回入荷分はすべて完売。次回リリース(来年?)を待ちたい。



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