SALON COLUMN

小さな大陸、シチリア⓫

2018.05.31

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小さな大陸、シチリア⓫

ここいらで一旦ワイナリー紹介を離れ、ワインの相棒であるシチリアの食の話をすることにしましょう。


グリーンピースと手打ちパスタ、カヴァテッリ。

土地の食について知りたければ、まず市場に行くのがいい。これは旅人の常識です。ある年の5月初旬、海辺の観光地として知られるタオルミーナへの最寄駅があるジャルディーニ・ナクソスという町の朝市を覗きに行きました。テントが立ち並ぶ市場の通路の先には雪を戴いたエトナ山が。その神々しい姿を眺めながら、通路をブラブラと進みます。



ジャルディーニ・ナクソスの駅。映画『ゴッドファーザーPartⅢ』のロケ地にもなった。




市場の向こうにエトナ山が。

海に近い場所でありながら、この市場では鮮魚よりもチーズなどの加工品や野菜、果物を中心に商いが行われているようです。トマトには「パキーノ産」の札が。シチリア南東部のパキーノは炎暑の地。ここのトマトのおいしさは別格だと言われています。ワインで言えばネーロ・ダヴォラの故郷に近いエリアです。アーティチョークにそら豆、おばあちゃんが得意満面に見せているのはズッキーニの花です。これにリコッタチーズを入れて揚げた前菜は季節の味。フェンネルもあります。フェンネルでワインの味をごまかしたというエピソードを前にこのコラムで書きましたね。



ズッキーニの花とおばあちゃん。

乾物屋さんには、イワシの塩漬け、干したトマトや唐辛子、離島パンテッレリア特産のケイパー、ピスタチオのペーストなどが並んでいます。ピスタチオはエトナ山の火山岩に生えたものが良いとされ、アーモンドと並んでパスタや肉料理にもよく使われます。シチリアを代表するデザートであるカンノーロにも刻んだピスタチオが欠かせません。ピスタチオのジェラートは僕の個人的なベスト・フレーバーです。



イワシの塩漬けと干した唐辛子。



ケイパー。塩漬けとオイル漬けがある。

果物屋さんの主役はオレンジとビワ。オレンジの木やビワの木は取材で訪ねたワイナリーの庭や果樹園でもよく出会いました。オレンジはあまりにもたわわに実って、収穫に人手がかかる割に値段は二束三文であるため、多くは木になったまま放置されていると聞いたことがあります。羨ましいやら、もったいないやら。ビワはイタリア語でネスポーロと呼ばれますが、原産地は中国南西部のはず。いったいどのような経路を辿ってシチリアの地に根付いたのでしょう?ハチミツも多種多様な花から採られているようです。高級なのはエトナ産だと聞きました。


オレンジとビワ。



ハチミツ。右はオレンジの花の蜜、左はユーカリ。

チーズ屋さんの店頭にデンと据えられているのは粒胡椒を埋め込んだペコリーノ・フレスコ。1キログラム=5.90ユーロと書いてあるから750円ほどでしょうか。卒倒しそうな安さです。このチーズに合わせるなら、フラワリーな香りのするフラッパートの赤かなと頭のなかでペアリングを想像します。瓢箪のような形をしたチーズはプラボラ。パンのように見えるのはセミハードタイプのラグザーノです。



チーズ屋さんの店頭に置かれたペコリーノ。



瓢箪型の牛乳チーズ、プラボラ。

肉屋もあるのですが、他のヨーロッパの町の市場と比べて数も少なく目立ちません。レストランではもちろんメニューに肉料理が並んでいますが、シチリアで伝統料理・家庭料理というと、肉の存在感は薄いようです。主役は野菜、パスタ、そして魚ということになります。調味料は、おいしい海の塩、ナッツやオリーブオイル、ケイパー‥‥。お腹が減ってきました。続きはまた次回にしましょうか。

(つづく)


Photographs by Taisuke Yoshida

 



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