SALON COLUMN

小さな大陸、シチリア❻

2018.04.24

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小さな大陸、シチリア❻

ピーター・ヴィンディング氏と妻のスージーさん。


去年の4月末、ワイン界にビッグ・ニュースが流れました。ピエモンテの雄、アンジェロ・ガヤ氏がシチリアに進出、エトナ山のビアンカヴィルの南西斜面に土地を買ってワインを造ることが決まったというのです。僕はそのニュースを「シチリア・アン・プリムール」(世界中のワインジャーナリストを招いて開かれるテイスティングイベント)の記者発表の場で聞きました。生産者協会の会長がこのニュースを誇らしげに読み上げた時、会場にどよめきが広がった様は今も強く記憶に残っています。




アンジェロ・ガヤ氏。御年78になる今もかくしゃく。


ガヤ氏を"その気"にしたのは"スーパー・タスカンの父"と言われた故ジャコモ・タキス氏。彼が生前シチリアのポテンシャルについて熱く語るのを聞いて、ガヤ氏は2015年からリサーチをしていたそうです。今回のシチリア進出は、エトナで〈グラーチ〉というワイナリーを営むアルベルト・グラーチ氏とのジョイントであるとのこと。グラーチ氏は僕がシチリア最高の造り手だと確信している、大好きな男です(グラーチのことはいずれ機会を改めて詳しく紹介します)。


〈グラーチ〉のアルベルト・グラーチ氏。


このコラムでシチリアの歴史について述べたとき、この島が地中海のど真ん中に位置することから、様々な民族や国家がやってきて、影響を与えていったという話をしました。現代においても、「外部の人がこの土地のポテンシャルに惚れ込んでやってくる」という宿命的な傾向は変わっていないようです。ワイン造りの分野でも、ヨーロッパ各地からビッグネームが続々とシチリアに進出しています。シチリア南東部のノートにはトスカーナ・キャンティの名門マッツェイ家が進出。赤ではネーロ・ダヴォラで噛めるようなテクスチャを持つ、独自のスタイルのワインを、また白では、グリッロとカタラットを半分ずつブレンドして、ミネラル感と果実味が拮抗する実に微笑ましいワインを造っています。





フィリッポ・マッツェイ氏は〈マッツェイ〉の24代目。




〈ジゾラ〉のラインナップ。右から2本目の「エフェ・エメ」は
マッツェイ氏のイニシャルを冠した4000本限定の意欲作。

ネーロ・ダヴォラにほんの少しだけプティ・ヴェルドをブレンドしている。
味わいは甘露の一言。


デンマーク人のピーター・ヴィンディング氏がシチリア第2の街カターニャから南西へ40kmの土地にシラーを植えたのは2010年。ヴィンディング氏は、ボルドーのメドックやグラーブ、南アでも活躍した名醸造家で、スペインのリベラ・デル・ドゥエロのカルトワイン「ピングス」で知られるピーター・シセック氏は彼の甥に当たります。2016年に彼の初ヴィンテージの各アイテムを飲む機会がありましたが、樹齢の若さを感じさせないベルベッティな舌触りと緻密な味わいに驚嘆しました。





フラッグシップの「ヴィンディング・モンテカッルーボ」。
近い将来、「シチリアはもう一つのシラーのホーム」と
人々に言わせるに違いない、
そういうポテンシャルを感じさせるワイン。
ブルーベリーにハーブのトーンが交じる。


ヴィンディング氏が惚れ込んだメリリの土地。

ナチュラル・ワインの世界ではつとに知られたエトナのフランク・コーネリッセン氏はベルギーでワイン商をしていた人です。残念ながら僕は本人とは面識がありませんが、彼の「マグマ」を飲んだときは、まるで溶岩流が喉を下ったような感覚があり、それまでのワイン観がひっくり返されたような気がしました。




エトナ山麓にある〈バー・オステリア・カーヴ・オクス〉は、
フランク・コーネリッセン氏が通う店。

コーネリッセンのレアなワインもセラーに眠る。



エトナのおいしいものを盛り合わせた〈カーヴ・オクス〉の前菜。


ガヤのシチリアワインは2017年が初ヴィンテージだそうです。まだワインは樽のなかでしょうが、次回シチリアを訪ねる際、樽からの試飲でもできたらと密かに楽しみにしているところです。 (つづく)



Photographs by Taisuke Yoshida

 



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