SALON COLUMN

セーニャ2011年とハーブでマリネした仔羊のグリル

2018.03.26



セーニャ2011年とハーブでマリネした仔羊のグリル

2015年ヴィンテージの「セーニャ」が、ワイン評論家のジェームズ・サックリングから100点満点を献上された。サックリングはワインスペクテイター誌の元副編集長兼欧州支局長。ロバート・パーカーと並び、ワイン市場に大きな影響力をもつアメリカ人だ。

 

これを祝し、セーニャの生みの親であるエラスリス社のエドゥアルド・チャドウィックが来日。マスタークラスセミナーとガラディナーを開催した。そのガラディナーの時のお話をしたい。

 

そもそもセーニャとはいかなるワインか? 

 

91年に近代カリフォルニアワインの父である故ロバート・モンダヴィが南米のチリを初めて訪問した際、彼を案内したのがエドゥアルド・チャドウィックだった。チリがもつ潜在的な可能性に興味を抱いたモンダヴィは、フランスのシャトー・ムートン・ロッチルドとの協業により生み出されたオーパス・ワンのストーリーをチャドゥイックに聞かせ、「我々も同じように共同でワインを造らないか?」と持ちかけたという。

 

両者はまず、ブドウ畑の選定から着手。4年間にわたってブドウ畑を探し回り、最終的にアコンカグア・ヴァレーの中でも海岸線から40キロの丘陵地に狙いを定めた。そこよりも30キロ内陸に位置するエラスリスの本拠地と比べて年平均気温は低く、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどボルドー系品種がエレガントに育つ。

 

こうしてエラスリスとモンダヴィのジョイントベンチャーとして誕生した、チリ初のアイコンワインが「セーニャ」である。初ヴィンテージの95年こそ、エラスリスの既存のブドウ畑から原料を調達したが、翌年以降はセーニャ・ヴィンヤードのブドウも使われるようになり、樹齢が高まるにつれ、その比率が高められていった。

 

2004年にロバート・モンダヴィ・ワイナリーはモンダヴィ家の手から離れたが、セーニャはチャドウィック家単独の事業として継続されることに決まった。そして同じ年、エドゥアルド・チャドウィックはひとつの賭けに出る。1976年のパリ・テイスティングを主催したスティーヴン・スパリュアを行司役に、今回はフランスやイタリアの錚々たるワインと自社のプレミアムワインを、専門家たちにブラインドでテイスティングさせたのである。

 

場所はドイツのベルリン。蓋を開けてみれば、偉大な2000年ヴィンテージのシャトー・ラフィット・ロッチルドやシャトー・マルゴーを尻目に、エラスリスがマイポ・ヴァレーのプエンテ・アルトで造るヴィニェード・チャドゥイックが1位、そしてセーニャが2位という快挙を成し遂げ、リーズナブルで高品質だが、世界のトップクラスには遠く及ばないという、それまで人々がチリワインに抱いていた評価を根底から覆すことに成功したのであった。

 

……と、えらく前置きが長くなったが、これでもセーニャについて語り尽くせたわけではない。とはいえ、本コラムはマリアージュがテーマなので、そろそろ先に進むことにしよう。

 

六本木のグランド・ハイアット・ホテルで開催されたガラディナーでは、ヴィンテージの古い順に、1997年、2004年、2009年、2011年、そしてパーフェクトポイントの2015年が供された。どれも素晴らしいワインだったが、もっとも感銘を受けたのは2011年だ。

 

2011年は冷涼で晩熟な年だった。収穫は平年よりも10~12日遅れたという。カベルネ・ソーヴィニヨン58%、カルメネール15%、メルロー15%、プティ・ヴェルド7%、カベルネ・フラン5%をブレンドし、フレンチオーク(新樽率75%)で22ヶ月間熟成させている。

 

ワインは深いルビー色を呈し、カシスやブラックベリーなど瑞々しくもよく熟した黒い果実のアロマに、スモーキーなニュアンスを伴う。凝縮した果実味は感じられるが、それが突出しているわけではない。適度に抑制が効き、バランスよく、ピュアな酸味が調和している。タンニンのキメは細かく、果実味の中にきれいに溶け込み、エレガントなマウスフィール。アフターにはチョコレートの香ばしさとミントの涼やかさなフレーバーが交錯する。

 

このワインは2009年とともに、仔羊のグリルと合わせて試すことになったが、マリアージュの面では2011年に軍配が上がった。2009年は果実味がリッチすぎて、しっとりとロゼ色にグリルした子羊の上品な風味を覆い隠してしまう。一方、2011年は、柔らかいながらも噛みごたえのある仔羊の食感とワインのテクスチャーが同調し、ハーブのフレーバーやほどよい酸味が、添えられた芹やセミドライトマトときれいな調和を見せていた。言うなれば、フードフレンドリーなヴィンテージなのだ。



この日のメニューは最初に鴨、次にこの子羊、最後に和牛サーロインという肉づくし。セーニャとのマリアージュをミスなく成功させる選択だったのかもしれないが、1997年と2004年に合わせた鴨の代わりに、醤油とバルサミコ酢でマリネしたマグロのたたきなど、もう少し冒険があってもよかったのではないかとは思う。




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