SALON COLUMN

チェコ・ワインを少しだけ❻

2018.02.22

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チェコ・ワインを少しだけ❻

プラハのワイン・バー〈ヴィノグラフ〉で3本目に出てきたのは、「レギーナ・ツェーリ フランコフカ2015」。グラウフレンキッシュ100%で造られた赤。1992年創業は、モラヴィアのワイナリーのなかでは比較的古参の部類に入ります。人為的な介入を極力排した自然な造りを行う生産者であるとのこと。ワインは香りにヨードのトーンがあり、口の中ではワイルドベリーそのもの。野趣とエレンガンスを併せ持つアンビバレンスに魅了されます。畑の基層は花崗岩だとヴェネラさん(マネージャー兼ソムリエ)が教えてくれましたが、おそらく表土は石灰質を含む粘土で、その影響がワインの陰影とヨード感に出ているのでしょう。店でのボトルの価格は、485CZK(約2530円)。


女王の肖像が印象的な「レギーナ・ツェーリ」。


たまたま来店していたプラハNo.1ソムリエ(右)。近々、自分の店を市内に開くとのこと。

赤の2本目(全体の4本目)はペトロ・コチャジックという造り手のピノノワール。ヴィンテージは2014です。家族経営の小さなワイナリーで、ビオディナミを実践している畑の広さはわずか2ヘクタール。樹齢20年のピノノワールから造られるこのワインは、年間わずか800本の生産であるとのこと。


力感に圧倒された「ペトロ・コチャジック ピノノワール2014」。

強烈なスパイス香になめし革や森の下生えの香りが交じります。スペイン・ナバーラの名物、ピミエントス・デル・ピキージョ(赤ピーマン)のローストを想わせる、甘く香ばしい風味も。際立った個性があり、「原始の律動」と形容したくなる力感に圧倒されます。このワインに合わせるのに、飼いならされた動物の肉では太刀打ちゆかない、もっと獰猛な何かの肉でなければ‥‥そんなことを妄想させるワインでした。店でのボトルの価格は890CZK(約4650円)。


〈ヴィノグラフ〉の長いカウンター席。

最後に登場したのは、ボヘミア地方のワイナリー、ヴィネ・スクラーペー・クトナ・ホラのスパークリング・ワイン、「キュヴェ・クックス ゼロ・ブリュット2014」。すでにお話ししてきたように、チェコ・ワインの大半は、オーストリア国境に近い、モラヴィア地方南部で造られています。〈ヴィノグラフ〉のリストでも国産ワインの95%はモラヴィア産が占めます。「でも、数は少なく、生産量も微少ながらも、とても良質なワインを造るワイナリーがボヘミア地方にもあり、私たちもそういったワイナリーを自分たちの足で丹念に回って、良い関係を作り、彼らのワインを店で紹介するようにしているのです」とヴェネラさんは言います。


最後の1本はボヘミアのスパークリング。

このスパークリングは、ピノグリ、ピノブラン、ピノノワールのブレンド。ブドウ畑はクックスというお城の中にあります。18カ月のシュール・リを経て、瓶内二次発酵を行うシャンパーニュ方式で製造。ドザージュはゼロ。生産本数はわずかに900本。この数字を見ただけで、いかに入手困難かが想像できます。店でのボトル価格は890CZK(約4650円)。イースト由来の柔らかな香味を、早くも熟成を感じさせるナッティなトーンが追いかけます。口に含むと、滑らかな泡の下から熟れた黄色いリンゴが顔を覗かせます。スケール感もあり、堂々たる泡。コクのある余韻も長く、ついもう1杯、飲みたくなります。このスパークリングは、ドイツの国際ワインコンクール「ムンドゥス・ヴィニ」で“東ヨーロッパ最高のスパークリング・ワイン”という評価を受けたそうです。


年間わずか900本のレアな泡。

この夜の〈ヴィノグラフ〉でのテイスティングは、まさに“グッド・ワイン”揃いで、それまでのチェコ・ワインに対する印象・評価を良い意味でひっくり返してくれるものでした。多くは流通しないけれど、素晴らしいワインが確実に存在する──チェコ・ワインの現状は、日本ワインのそれと似ているかもしれません。次回のコラムで、今回のレポートのおさらいをして、チェコの旅を締めたいと思います。

(つづく)

Photographs by Tiasuke Yoshida



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