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台湾で稀少なワインを その2

2017.11.23

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台湾で稀少なワインを その2

台北・民生社区のワインショップ兼ワインバー「エトワール(星澈酒品)」は2013年の暮れにオープン。オーナーのアレン・リュウさんは、元はドキュメンタリー映画の監督をしていた人です。04年に渡仏し、パリやリヨンで活動するうちにワインの魅力に目覚めていったそうです。2010年に帰国し、ショッピングセンター「誠品」のワイン売り場で店長を務めた後、念願だった自分の店を構えたとのこと。前回ご紹介したギリシャ、日本、スペイン、イタリアのワインの他、珍しいところではスロバキア、ルーマニア、カナダなどを含め、20カ国以上のワインを扱っているそうです。

 


フランスで暮らすうちにワインに開眼したリュウさん。

 

さて、ギリシャのロゼ・スパークリングの後、抜栓されたのは台湾産の白ワインでした。「ウェイト・ストーン ムサン・ブランク キュヴェNo.14  2014」。ライチやジンジャー、白い花の香りのする極めてエキゾチックなワインです。ワンさんやリュウさんの説明によると、このワイナリーは台中にあり、2011年に誕生したとのこと。さらにスマートフォンを駆使して調べたところによれば、ワイン造りはアメリカ・ナパのチームがコンサルティングを行なっていて、このワインは生産量がたったの2000本。価格は日本円にして11000円くらい。ムサン・ブランクという耳馴染みのない品種は、台湾で開発されたものとのことでした。

 


台湾産プレミアムワイン。右の赤ワインは残念ながらブショネだったが。

 

ポルトガルでワイン・ライター兼医師のワンさんと出会い、「台湾でもワインを造っているんですよ」と聞かされたとき僕の頭に浮かんだのは、失礼ながら、日本の地方の土産屋で今も見かけるような、お世辞にもおいしいとはいえない代物でした。ところが、驚くべきことに、この時、目の前のグラスに注がれていたのは、世のワイン好きの興味を引き、想像力を掻き立てるに違いない良質なワインでした。灯台下暗し。ヨーロッパや南半球のワインの最新情報ばかり気にかけている間に、お隣の台湾でもワインの世界に新たなムーブメントが起こっていたのです。

台湾のワイン造りは日本による統治時代(1895-1945)に始められました。最盛期には5200ヘクタールものブドウ畑が広がっていたそうです。そのうち、今も残っているのはわずかに60ヘクタールほど。このような状況下でワイン生産再興のために立ち上がったのが後にウェイト・ストーンを興すことになるベン・ヤンという人物でした。

稲作と同じように、台湾ではブドウも二期作が可能だそうです。沖縄の石垣島と同じくらいの緯度、多雨であることを考えるとブドウの栽培適地を台湾に求めるのは容易ではないでしょう。しかし、阿里山などの高地では、高品質で知られる茶を始め、コーヒーにも見るべきものが出てきています。「適地適品種」さえ確立すれば、今後世界を驚かせるワインが登場する可能性はありそうです。

 

次に開けたワインは、「レ・ベレ・コリーヌ ロシアン・リバー・ヴァレー ピノノワール2012」。カリフォルニア・ナパのワイナリーですが、オーナーのデイヴィッド・パン氏は台湾系アメリカ人です。ワインは赤い果実のアロマと伸びやかな酸を持つ、チャーミングなピノでした。ピノノワールのような国際品種がキー・バラエティとして世界各地で栽培され、新たな個性を纏うように、台湾人が世界のワイン・シーンに進出して、彼らのカラーを体現している、そんな様子が脳裏に浮かびました。

 


ナパで台湾系アメリカ人が興したワイナリーのピノ。

 

赤の2本目は、この夜の主役となるべき台湾産の赤ワイン、「ドメーヌ・クロワッサンス・プロフォンド ブラック・クイーン2014」だったのですが、“日本のワインぶどうの父”川上善兵衛氏ゆかりの品種で造られたこのワインは、あいにくブショネ(コルク汚染)で、その本領を味わうことはかないませんでした。

 


リュウさんの妹トゥレサさん、日本留学の経験もあるケビン・リンさんを交え、グッド・ワイン談義が盛り上がった。

 

さらに何本かのボトルが開けられました。いつの間にか古い仲間と酌み交わしているような気分になりました。ワインが人を繋ぐものだと、改めて感じました。わずか一晩、一軒だけの台湾ワイン事情のリサーチでしたが、次へとつながる端緒を与えられた気がしました。また近いうちに機会を作って台湾に渡り、取材して、あらためて詳細をレポートできたらと考えています。

 

※エトワール(星澈酒品) http://letoilevin.pixnet.net/blog

 

Photographs by Hiromichi Kataoka



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