SALON COLUMN

黒トリュフのタリアテッレとカンヌビ・ボスキス

2017.10.30



黒トリュフのタリアテッレとカンヌビ・ボスキス

初めてトリュフなるものの香りを嗅いだのは、かれこれ30年前。当時、ワイン専門誌の駆け出し記者だった私は、FOODEX(フーデックス)という世界の食品展示会の取材に幕張まで出向き、とあるブースで生のトリュフを見つけた。

 

その黒い塊を物珍しそうに見ていた私に、ブースの担当者が「嗅いでみるか?」と聞くので、喜んで嗅がせてもらう。初めて嗅いだペリゴール産(だったと思う)の黒トリュフは、なんとも妖艶な香りを放っていた。その時初めて「アフロディジアック=媚薬」という言葉を知ったのだ。

 

それからわずか数日後、ジャン・ピエール・ムエックス社から社長のクリスチャン・ムエックスが来日し、同社ワインの試飲セミナーが開かれた。ラインナップにはトロタノワやマグドレーヌとともに、なんとポムロールの至宝ペトリュスまで含まれていた。業界向けのセミナーでも、こうしたグラン・ヴァンが豪勢に振る舞われた、じつに大らかな時代だった。

 

ヴィンテージは忘れてしまったが、これまた人生初めてのペトリュスが入ったグラスを鼻に近づけた刹那、FOODEXの記憶が蘇った。「トリュフ!」 試飲したのは若いヴィンテージのはずだから、単なる思い過ごしかもしれないが、ワインの香りの中にトリュフを見つけ出した瞬間である。

 

さて、今回のテーマはトリュフ。黒トリュフはフランスのペリゴール産、白トリュフはイタリアのアルバ産がつとに有名だが、アルバでは黒トリュフも採れるらしい。そしてアルバの位置するピエモンテ州のワインといったら「ワインの王様、王様のワイン」と崇め奉られるバローロである。

 

そのバローロから、モダン派の先駆者と称されるルチアーノ・サンドローネの娘、バーバラが来日。プレス向けの試飲ランチが、渋谷の「OUT」で開かれた。この店がじつに面白いコンセプトで「One Dish. One Wine. One Music」。料理はトリュフの盛られた自家製フレッシュパスタのみで、ワインはそれに合わせた1銘柄に限り、流れる音楽はレッド・ツェッペリン。店内に設置された自販機で食券を買うシステムである。最近は南半球からも輸入されるようになったから、トリュフが途切れることことはなさそうだ。

 

 

さて、サンドローネのバローロには複数の区画をブレンドした「レ・ヴィーニェ」と、ルチアーノが1977年に購入した単一畑「カンヌビ・ボスキス」の2種類がある。90年ヴィンテージにパーカーが100点を献上し、一気にブレークしたカンヌビ・ボスキス。ところがカンヌビという正式なクリュの名前にボスキスという区画名をつけることは違法といちゃもんがついた。まぁ、やっかみすな。ことは訴訟にまで発展し、ボスキスを名乗ってもよろしいとお沙汰がくだったが、サンドローネは13年ヴィンテージから名前を変えることを決断。新たな名前は「ALESTE(アレステ)」だ。

 

アレステはバーバラの娘のアレシアと、息子のステファノに由来する。ふたりとも醸造学を学んでおり、ゆくゆくはサンドローネを継ぐ身の上。創業者ルチアーノが初めて手にいれた思い出深い畑を、新しい世代に委ねることからこの名前になったという。

 

この日はドルチェットとバルベーラ、それにネッビオーロ・ダルバの「ヴァルマッジョーレ」のほか、「レ・ヴィーニェ」の2013年と2007年、それに「カンヌビ・ボスキス」改め「アレステ」の2013年と「カンヌビ・ボスキス」の2007年が供された。両バローロとも2007年は「シビ・エ・パウチ」のシリーズ。

 

 

通常でもバローロは規定より1年長く寝かせ、収穫から4年後にリリースしているサンドローネ。しかしそれでも早く飲まれすぎることを懸念したルチアーノが、ワインの一部を自社セラーでさらに寝かせ(バローロは収穫から10年)、ふたたびリリースすることにした。これが「シビ・エ・パウチ」である。

 

2007年のカンヌビ・ボスキス、これがじつに素晴らしかった。2013年のアレステもタンニンの質はキメ細かとはいえ、まだ硬さが十分にとれてはいない。一方、2007年は角がきれいに削がれ、球体のようなテクスチャー。香りもプラムのリキュールやスモークに混じり、あの艶かしいトリュフのフレーバーが漂う。

 

そこにアルバ産黒トリュフのタリアテッレが登場。トリュフの量は約5グラム。ところが、十分な量がスライスされていたにもかかわらず、残念ながら香りが少々もの足りない。アルバならやはり白トリュフ?

 

 

というわけで、サンドローネのバローロとトリュフのマッチングの結果はお預けに。果たして、白トリュフと熟成したカンヌビ・ボスキスを試す機会など、いつになったら訪れるのだろうか?



――――――――――  おすすめ記事一覧  ――――――――――

―――――― おすすめ記事一覧 ――――――



カルチャースクールの課外講座


レミーのおいしいレストラン風ラタトゥイユとプロヴァンス・ロゼ



PAGE TOP
8,000円(税抜)以上ご購入で送料無料キャンペーン中