リースリングの名産地・ドイツワインの特徴と等級とは?
2017.09.27
ドイツのワイン造りは古代ローマの時代から始まったとされます。主要品種のリースリングをはじめ、ドイツの固有品種からは個性豊かなワインが誕生しています。
ドイツワインというと、これまではリースリングを使用した白ワインやアイスワインのイメージが強くありましたが、暖かい南部の地域では赤ワインが造られているのをご存じでしょうか。
ここではドイツワインに興味がある人向けに、ドイツワインの特徴や品質分類、白ワインと赤ワインの主な産地をご紹介します。
【目次】
1. ドイツワインの特徴
2. ドイツワインの品質分類
3. 白ワインの主な産地
4. 赤ワインの主な産地
5. ドイツワインの進化を楽しもう
ドイツワインの特徴
冷涼なドイツでは、ライン川流域を中心にその気候を生かしたワイン造りが行われています。代表的なブドウ品種はやはりリースリングです。
●世界で最も北にあるワイン産地
ドイツのワイン生産地は、世界のブドウ栽培地の中でも北限に位置しており、北緯47~52度にあります。ヨーロッパのワイン生産地に比べ、日照時間が少ないことで知られています。
北限の地とはいえ、温暖な北大西洋湾流による海洋性気候のおかげで冬はそれほど寒くありません。
冷涼ながら夏場の日照量が多いためブドウが穏やかに熟し、糖度と酸味のバランスの良いワインが造られています。
●優れたワインはライン川流域で造られている
ドイツワインは国土の南部と南西部に集中しています。旧東ドイツであるザーレ・ウンストルートやザクセンもワイン産地として有名ですが、ライン川の流域や支流にブドウ栽培地は密集しています。
ライン川の周辺の地層は岩盤が固く、土壌のミネラル分が豊富です。冷涼な気候も相まって、リースリングなど白ブドウの品種の栽培に適しています。特にモーゼル地区やラインガウ地区では川沿いの急斜面にブドウ畑があり、日照条件が良くなるような工夫がされています。
●代表品種はリースリング
ドイツで栽培されるブドウ品種のうち、最も有名なリースリングは世界最大の栽培面積を誇ります。
リースリングを用いた白ワインは、辛口から甘口まで幅広く造られます。アイスワイン、トロッケンベーレンアウスレーゼなど、極甘口のワインにも使われています。
以前は輸出先のアメリカの要望もあり甘口ワインを大量に造っていましたが、世界的に辛口の食事用ワインが求められるようになって、リースリングでも辛口ワインの生産が増加しています。
●南部では赤ワインを生産
赤ワインの生産も盛んです。冷涼なドイツの中でも温暖な南部で黒ブドウ栽培が広がりを見せ、中でもアールは赤ワインの生産量が白ワインよりも多いことで知られています。
また、黒ブドウ品種の中でも栽培面積が大きいのはシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)です。
ドイツワインの品質分類
ドイツワインの品質は非常に細かく分類されています。知っておくと、購入する際の手助けになるでしょう。

●ドイツワインは品質等級をラベルに記載
ドイツワインの場合、品質等級を細かくラベルに記載する必要があります。ドイチャー・ターフェルヴァイン、ドイチャー・ラントヴァイン、Q.b.A、Q.m.Pなどの品質等級をはじめ、A.P.Nr.という3段階の公的品質検査を受け、品質検査番号を記載する義務があります。
また、ラベルには村名、畑名、辛口、甘口などワインのスタイルも記載します。中には、使われているブドウ品種をラベル表記する生産者もいます。
●ドイツワインの等級は糖度が基準
ドイツは冷涼な地域であることから、糖度の高いブドウが重宝された歴史があります。1830年に、物理学者のフェルディナント・エクスレによって考案された「エクスレ度」と呼ばれる糖分測定法を使い、糖度が計算されます。その糖度によって等級が決められる品質等級があることからも、ドイツがブドウの糖度を大切にしていたのがうかがえます。
●Q.m.P(カリテーツヴァイン・ミット・プレディカート)
Q.m.Pは、通称「プレディカーツヴァイン」と呼ばれ、ドイツ最高級ワインの格付けです。あくまでも収穫されたときの糖度値に準ずるものであり、特定の畑などにつけられる格付けではありません。
Q.m.Pは6段階あります。糖度の高い順から「トロッケンベーレンアウスレーゼ」「アイスヴァイン」「ベーレンアウスレーゼ」「アウスレーゼ」「シュペトレーゼ」「カビネット」です。糖度基準は地域やブドウ品種によって異なります。
・トロッケンベーレンアウスレーゼ
貴腐ブドウを使って造られる極甘口のワインです。最低アルコール度数は5.5%以上です。
・アイスヴァイン
自然の状態で樹になったまま凍結したブドウを収穫し、凍ったまま圧搾した果汁をワインにしたもの。最低アルコール度数は5.5%以上です。
・ベーレンアウスレーゼ
過熟したブドウ、または貴腐菌が付着したブドウを収穫して造られるワインです。最低アルコール度数は5.5%以上が求められます。
・アウスレーゼ
十分に完熟し、シュペトレーゼよりも糖度が高いブドウで造られるワイン。最低アルコール度数は7%以上です。
・シュペトレーゼ
ドイツ語で「遅摘み」を意味する言葉で、通常のブドウ収穫時期より少なくとも1週間後に収穫されたブドウを使用しています。最低アルコール度数は7%以上です。
・カビネット
Q.m.P内では最も糖度が低く、辛口や中辛口のものが多く見られます。最低アルコール度数は7%以上です。
●Q.b.A(カリテーツヴァイン・ベシュティムター・アンバウゲビーテ)
13ある特定栽培地域のうち、一つの地域で収穫されたブドウだけを使用したワインです。その他にも、地域で推奨または許可されている高級ワイン用品種で造られていること、公的機関の品質検査を受けてA.P.Nr.をラベル表示することなどの条件があります。
・クラシック&セレクション
2000年より加えられた新たな品質等級です。上級品質の辛口ワインに与えられるもので、単一ブドウ品種で醸造された赤・白・ロゼに適用されます。
クラシックはQ.b.Aで特定されている13の栽培地域の伝統的なブドウ品種を使用し、基準をクリアしている辛口ワインのことです。
セレクションはクラシックよりも上のクラスに当たる上級辛口ワインと定義されています。
●ドイチャー・ラントヴァイン
指定された地域のブドウを85%以上使用したワインに与えられます。Q.m.PやQ.b.Aに比べ緩和されたカテゴリーであり、地酒的なワインとされています。一部地域を除きますが、辛口か中辛口が対象です。
●ドイチャー・ターフェルヴァイン
「ターフェルヴァイン」とはテーブルワインのことであり、簡単に説明すると、ドイツ産テーブルワインという品質分類です。
地理的表示のないワインであり、ドイツ国内産のブドウ品種を100%使用することが条件となっています。使用する品種や収穫年度のブドウを85%以上使うなどの条件を満たすと、ブドウ品種やヴィンテージはラベル表示が可能となります。
白ワインの主な産地
ドイツは白ワインの有名産地です。ここでは白ワインの主な産地であるモーゼルとラインガウについて、地域の特徴や栽培されているブドウ品種、ワインの特徴をご説明します。
●モーゼル
モーゼルは、ドイツ国内で最も古いワイン生産地として知られている銘醸地です。栽培面積は、およそ8800ヘクタールとされており、そのほとんどのブドウ畑が急斜面にあります。
・地域の特徴
モーゼル川に沿って南北に展開され、6つの地区(ベライヒ)に分かれています。
モーゼル川支流のザール川とルーヴァー川の流域はデヴォン紀のスレート土壌(粘板岩)となっており、ミネラルや有機物が豊富であることからリースリング栽培に向いています。
・主なブドウ品種
モーゼルの主なブドウ品種は、リースリングです。ほかには上流のオーバーモーゼルで古くから栽培されていたエルプリング、ミュラー・トゥルガウなどがあります。シュペートブルグンダーなどの黒ブドウ品種も栽培されています。
・ワインの特徴
多くはリースリング種による辛口の白ワインです。オーバーモーゼルのエルプリングからは、すっきりとした酸味の辛口白ワインが造られています。
<モーゼル地方のおすすめワイン>
ヴェレナー・ゾンネンウーア リースリング アウスレーゼ 2006 ヨハン・ヨゼフ・プリュム / ¥9,800税別
ヴェレナー・ゾンネンウーア リースリング アウスレーゼ 1994 ヨハン・ヨゼフ・プリュム / ¥17,900税別
ヴェレナー・ゾンネンウーア リースリング アウスレーゼ 1985 ヨハン・ヨゼフ・プリュム / ¥24,800税別
●ラインガウ
リースリングの栽培比率が高く、輸出も行っている世界的にも有名なワインの銘醸地です。
・地域の特徴
ラインガウはライン川の北側にある長い丘陵の斜面で、ウンターマインからロルヒハウゼンまで広がっています。夏は暖かく、冬は穏やかな気候で、ブドウ畑が南向きにあります。名門ワイナリーはラインガウの中央部に多いです。
・主なブドウ品種
ラインガウの主要品種は、リースリングです。赤ワインのブドウ品種に適した土壌を持つアスマンスハウゼンでは、シュペートブルグンダーが主体となっています。
辛口ワインがほとんどを占めますが、トロッケンベーレンアウスレーゼなど高級極甘口ワインの名産地としても有名です。
・ワインの特徴など
ラインガウは「最高峰のリースリングを生産する地域」といわれており、リースリングによって世界的産地となったともいわれています。エレガントでスパイシー、だれない酸味など、複雑性がありながらもバランスの良いワインが造られます。
赤ワインの主な産地
比較的暖かいドイツ南部をはじめ、ドイツでは高品質な赤ワインも多く生産されています。主な産地はアールやヴュルテンベルクなどです。
●アール
ドイツ西部の最北に位置するアールは、ドイツで最も小さいワイン産地の一つです。赤ワインの生産量が多いことで知られます。
・地域の特徴
アイフェル山地のおかげで気候は穏やかで、年間降水量は少なめ、ワイン産地にしては平均気温が低めです。谷がライン・スレート山地の一部分であることから、スレート土壌の恩恵を受けています。
・主なブドウ品種
アールでは、栽培されているブドウ品種の約80%以上が赤ワイン用の品種です。シュペートブルグンダーが最も多く、ポルトギーザー、シュペートブルグンダーの突然変異のフリューブルグンダーも栽培されています。白ワインの主な品種はリースリングです。
・ワインの特徴
アールは、西側と東側でワインの特徴が違います。
西側は粘板岩、火山岩などが多いため、肥沃ではない痩せた土地となっています。そのため、ミネラル分が豊富で堅牢なワインが出来上がります。
一方、東側はローム土壌、黄土といった土壌となっており、西側に比べてやや柔らかな印象のワインが造られます。
●ヴュルテンベルク
バーデンとともにドイツで最も南に位置する産地です。ヴュルテンベルクもアール同様に赤ワインの生産量が多い産地です。
・地域の特徴
赤ワインと白ワインをブレンドしたシラーヴァインというロゼワインが造られた土地としても知られています。シュヴァルツヴァルトとシュヴェービッシェ・アルプという2つの山地に守られ、強風や雨をしのいでいます。川沿いにある畑は温暖で、赤ワイン用のブドウ品種の栽培に適しています。
・主なブドウ品種
ヴュルテンベルクでは、トロリンガー、レンベルガー、シュペートブルグンダー、ムニエなど、さまざまな黒ブドウが栽培されています。中でも同地の名産といわれるのがトロリンガー、レンベルガーです。白ワインはリースリングが主要品種です。
・ワインの特徴
日照量に恵まれている畑が多くあるヴュルテンベルクは、濃厚な味わいの赤ワインを楽しめます。土壌自体が多様なことから、赤ワインもバラエティに富んでおり、フレッシュなタイプから上品なものまで、幅広く楽しめます。
ドイツワインの進化を楽しもう
「ドイツワインは甘口」というかつてのイメージから脱却すべく、多くの生産者が積極的に高品質な辛口ワインを製造しています。その証拠に、ドイツには国際的に優れたワインを造る生産者たちによる「VDP(ドイツ・プレディカーツワイン生産者協会)」が存在します。協会独自の格付けも存在し、品質の向上を目指すなど、ドイツワインは新しく進化を遂げようとしています。
定番の白ワインやアイスワイン以外に良質な赤ワインもたくさんありますので、今回ご紹介した産地を目安に、ドイツワインの可能性を味わってみてはいかがでしょうか。

<おすすめワイン>
ヴェレナー・ゾンネンウーア リースリング アウスレーゼ 1985 ヨハン・ヨゼフ・プリュム / ¥24,800税別
