ワインのフルボディとは?赤ワインの味わいを表す「ボディ」の意味
2017.09.27
ワイン用語に「フルボディ」という言葉があります。
主に赤ワインの味わいについて語るときに、「このワインはフルボディなので飲みごたえがある」や「ミディアムボディだから飲みやすい」など、ボディという表現が使われます。
今回は、ワインについてまだ勉強を始めたばかりの人を対象に、フルボディをはじめとしたボディの意味についてご紹介します。
【目次】
1. ワインの味わいに関するさまざまな表現
2. 「ボディ」には3種類ある
3. フルボディでおすすめのワイン
4. ボディを覚えて、さまざまなワインを楽しもう
ワインの味わいに関するさまざまな表現
ワインの味わいに関する表現は、ボディ以外にもさまざまな表現があります。
●白ワインとロゼワインは「甘口」「辛口」で表現される
ボディという言葉は、赤ワインに主に使われる傾向があり、白ワインやロゼワインの場合は「甘口」「辛口」という言葉で味わいが表現されます。
赤・白・ロゼに限らず、ワインは発酵を止める時期によって、さまざまな味わいのスタイルに変化させることが可能です。
●赤ワインを表す「ボディ」
ボディは主に赤ワインの味わいを表現する際に使われますが、一言で日本語に表すのが難しい言葉です。
ボディについてよくいわれているのが、口に含んだときの印象です。
「重厚感」「コクがある」「ふくよか」などといった印象のものは「フルボディ」、重厚感などが中程度のものは「ミディアムボディ」、フレッシュで軽めのものに関しては「ライトボディ」などと評価されます。
例えば、アルコール度数14度で3年間の樽熟成を経たボルドータイプの赤ワインと、ボージョレ・ヌーヴォーのように、その年に収穫したガメイ種を醸造して出荷したものを思い浮かべてみましょう。
ボルドータイプのワインのほうが重厚感あるフルボディワインで、ボージョレ・ヌーヴォーがフレッシュなライトボディワインと想像できるのではないでしょうか。
●ボディを決める要素とは?
ボディを決めるのは、主にワインのアルコール度数やポリフェノール類の違いといわれています。
・アルコール
コクなどワインの味わいを左右する一つの要素がアルコールです。
アルコール度数が高ければ高いほどコクが強くなる傾向にあり、フルボディのワインが多く見られます。
ただし、中にはアルコール度数が低くてもボディをしっかり感じられるワインがあります。アルコール度数の高いワインが必ずしもフルボディのワインというわけではありません。
・ポリフェノール(タンニン)
ポリフェノールとは、アントシアニンやタンニンなどの総称です。ブドウの果皮や種子に由来する成分ですが、赤ワインの場合は醸造方法や熟成方法によってもその含有量が変わってきます。
タンニンが多いワインは収れん性があり、熟成に耐える強さを持ちます。熟成させることによって渋みはマイルドになりますが、タンニンの豊富なワインには重厚感があります。
そのため、タンニンを豊富に含むブドウ品種を使ったワインほど、フルボディと表現されるものが多く見られます。
・その他の要素
ブドウ由来の香りや熟成中の樽に由来する香りなど、アルコール度数やタンニンをはじめとしたポリフェノール以外にも、ボディに影響を与える成分は存在しています。
ひと言でボディという言葉が片付けられないのは、こうした数多くの要素が関与しているからなのです。
●赤ワインにも甘口はある
赤ワインにも甘口がないわけではありません。
代表的なものでは、イタリアの低アルコール・微発泡性の赤ワイン「ランブルスコ」と「ブラケット・ダックイ」や、ポルトガルの「ポートワイン」などが知られています。
「ボディ」には3種類ある
ボディには、フルボディ・ミディアムボディ・ライトボディの3種類があります。それぞれどのようなときに使われるのか、ご紹介します。
●フルボディ
フルボディの味わいの特徴は、コクがあり濃厚な傾向のあるものとされています。
ただし、「口当たりは優しいものの、ボリューム感があり余韻の長いもの」や、「口当たりが余韻にかけて重厚感のあるもの」も、フルボディと称されます。
色合いが淡い、余韻が短い、口の中でさらっとしているなど、誰もが「軽め」と捉えられる場合はフルボディとは表現されません。
高級ワインの多くは長期熟成型なので、一見全てフルボディであるかのように思われがちですが、実際はそうではありません。
例えば、世界最高峰の高級ワイン産地、ブルゴーニュで造られる高級赤ワインの主要品種は、ピノ・ノワールです。ピノ・ノワールは、カベルネ・ソーヴィニヨンやネッビオーロ、アリアニコなどの黒ブドウに比べて、ポリフェノール含有量は低いことがわかっています。
ワインの色合いを見てもわかるように、ピノ・ノワールは洗練された淡い色合いで酸度が高いことも特徴です。
ピノ・ノワールは、ミディアムボディと称されることも多く、人によっても味覚や感覚に違いがあるため、高級ワイン=フルボディという図式は絶対とはいいきれないのです。
●ミディアムボディ
ミディアムボディは、その名の通り、フルボディとライトボディの中間的な味わいのワインを差します。言い換えると、「ちょうど良い」とも取れる表現です。
香りに関しても、際立っているというよりは、「認識できる」「存在しているのがわかる」といった主張しすぎない、程良さが感じられるワインです。
メルロやピノ・ノワール、テンプラニーリョ、カベルネ・フランといった黒ブドウから造られるワインに多く見られます。
ミディアムボディのワインは、味わいの特徴からも、「万人向け」という表現が合っているかもしれません。
料理に合わせやすく、タンニンも強過ぎないため、初心者でも挑戦しやすいワインであることは間違いないでしょう。
●ライトボディ
その名の通り「軽やかなワイン」というのが、表現として合っているでしょう。
各国の新酒などに代表される、その年に収穫された黒ブドウを使用した、軽めでフレッシュ、フルーティーな赤ワインの味わいがライトボディに当たります。
安いワインに多いと思われがちですが、安いワインだから軽いということはなく、高級赤ワインにもライトボディは見られます。
赤ワインが苦手な人には、ライトボディのワインがおすすめです。フルボディの大切な要素である重厚感とは対照的に、タンニンが穏やかで酸味はほどほど、香りも突出しすぎず、フルーティーでフレッシュな味わいを楽しめます。
冷やしたり、氷を入れたり、フルーツを漬け込むなど、アレンジもしやすいのがライトボディのワインの良いところです。
ワインに慣れていない初心者など、赤ワインの入り口にはぴったりな味わいではないでしょうか。
●ボディの区別にルールはない
ボディには数多くの要素が絡まりあい、その結果で分別されています。しかし、ボディの感じ方は個人の主観であることも忘れてはいけません。
ミディアムボディをフルボディと思う人がいれば、ライトボディをミディアムボディと思う人もいます。
ほかの人と感じ方が違っていても、気にする必要はありません。ワインは自分の感じた味わいで楽しむものです。
●ワインのラベル表示は信用できるか?
ボディの捉え方は人それぞれなので、ワインラベルの表示も完全に信用する必要はありません。
表示基準などは、インポーターやメーカーによって異なります。フルボディと表示するための法律基準などもありません。
表示に関しては、購入の目安くらいに考えておくと良いでしょう。
フルボディでおすすめのワイン
世界中にはフルボディの素晴らしいワインが多くあります。フルボディのワインを造りだす主なブドウ品種と、おすすめのフルボディワインをご紹介します。

●フルボディを生み出す主なブドウ品種
フルボディのワインを探す場合、使用されているブドウ品種からたどっていくと、出会える可能性が高くなります。
<カベルネ・ソーヴィニヨン>
フルボディのワインを生み出す代表的な品種といえば、カベルネ・ソーヴィニヨンです。
ポリフェノール類を多く含み、収穫時期の遅い晩熟タイプの黒ブドウのため、果実味もたっぷりあります。
渋みが強く、長期熟成型のワインを生み出す高級品種です。
<シラー>
濃厚でスパイシーなワインを生み出すシラー。
フランス、コート・デュ・ローヌ地方のシラーはエレガントなタイプですが、オーストラリアのシラーズはもう少し、どっしりとした果実味あふれるワインを生み出します。
色合いが濃く、渋みも比較的強い、飲みごたえのあるワインを生み出します。
<ピノ・タージュ>
ピノ・タージュは、南アフリカで生まれた独自の交配品種です。
ピノ・ノワールとサンソーのハイブリッドであり、洗練された果実味と濃厚な味わいが特徴です。
スパイシーさがあり、タンニンも力強く、素晴らしいフルボディのワインを生み出します。
<タナ>
タナはフランスの南西地方、マディランの主要品種です。
タンニンが豊富に含まれていることから、この名が付けられたといわれています。重厚感があって色も濃く、濃厚なワインを生み出す注目品種です。
●おすすめワイン
<バンボーズ・ベイ ピノ・ノワール[2013]フライヤーズ・コーヴ・ヴィンヤーズ>
南アフリカの西海岸、ドーリング・ベイ近郊にあるバンボーズ・ベイが産地。品種はピノ・ノワール、アルコール度数は13度で、ミディアムからフルボディのワインです。
プラムなどの果実やハーブの香りを楽しめ、カツオのたたきなどがよく合います。
<ライクス シラーズ プライヴェート・セラー [2008]>
南アフリカの上質なシラーズを使用したワインで、産地はタルバッハです。
深いルビー色に、この品種らしさを楽しめるスパイシーな風味が魅力で、ペッパーステーキなどがよく合います。アルコール度数は14度。
<ライクス ピノタージュ プライヴェート・セラー [2011]>
南アフリカを代表する黒ブドウ品種ピノ・タージュを使用した、タルバッハのワインです。
しっかりとした果実味で、レッドベリーやチェリー、プラムのアロマが心地よさを感じさせます。アルコール度数は14度。牛タンシチューなどがよく合います。
ボディを覚えて、さまざまなワインを楽しもう
ボディを形成する要素は、アルコール度数やタンニンを含むポリフェノール類、さらには香りやその他の成分の含有量など、多岐にわたっています。感じ方は人それぞれによるところも多く、一概に「このワインは誰が飲んでもフルボディ」ということがいえません。
ただ、ボディにまつわる基礎知識を知っておくと、親しい人にプレゼントしたり、レストランで頼んだりするときに、ワイン選びの参考になるはずです。
ボディはあくまで「ワイン選びの基準」として覚えておき、気軽な気持ちでワインを楽しんでください。
