SALON COLUMN

ビステッカ

2017.10.17



ビステッカ

地方色豊かなイタリアの食文化。いくつもある名物の中でも欠かせないもののひとつがビステッカ・アッラ・フィオレンティーナだろう。フィレンツェ名物、いわゆるTボーンステーキである。フィレンツェに行くと、このビステッカを食べさせる店がたくさんあるが、イタリアはもとより世界中から観光客が押し寄せるため人気店はいつも予約困難。ホテルのコンシェルジュからネゴってもらうとか、直接お店に出向いて笑顔を振りまきながら予約すると良いだろう。

 

さて、めでたく入店できたならばビステッカを注文しよう。ビステッカを美味しく焼き上げるためにはどうしても厚さが必要で、だいたい1枚1.3~1.5kgから注文できるシステムになっている。日本人には相当多いように思われるが、ごつい骨がついてのその重量で、しかも脂肪の少ない赤身肉なので、ほかの料理を控えて数人でかかれば食べ切れない量ではないだろう。逆に言うと美味しそうな前菜やパスタがメニユーに並ぶが、ビステッカ目当てであればそれらの誘惑に勝たなくてはならない。食べ切れなければ残してしまおうというのはなしだ。注文したビステッカを全部食べきるまでは店から帰してくれないのもジョークなのかどうなのか、伝統のようである。

 

注文を受けた厨房では、3~5cmぐらいと辞書のように分厚く切った現地キアナ牛のTボーンを強力な炭火で焼く。設備の関係で炭火ではなくグリルで焼く店もあるが、やはり炭火で豪快に焼くのが基本になる。両面を数分ずつ焼いた後、今度はTボーンの骨の面を下にして立ててさらに焼く。こうすると、骨を通じて分厚い肉の内部にまで熱が入るのだそうだ。表面に焦げ目がつくまで焼いた肉を十分に休ませ、予熱を入れていく。こうすることで、見た目には火が入りすぎてそうに見えても、中は赤いレア。この厚みがなせる技だ。

 

力強いサーロインとフェミニンなフィレを分ける分水嶺たる骨に沿ってナイフをいれ、いよいよビステッカを口に運ぶ。わずかに鉄のようなニュアンスも感じさせる美味しい赤身牛を頬張りながら飲むのはやはりキアンティ・クラッシコ。しかもバリック(小樽)熟成のモダンなワインより、伝統的な大樽熟成のキアンティがいいだろう。店によっては観光客向けなのかビステッカに合うとは思えないグラスワインがあったり、逆に不釣り合いに高級なワインがオンリストされているがそれらを注文する必要はない。複雑な味わいのソースを添えず、塩コショウ、オリーブオイル、時にはレモンでシンプルに楽しむこの料理にはやはりシンプルなキアンティ・クラッシコがよく合う。肉の風味、味の細かいニュアンスに寄り添い、お互いを高めてくれる。地元の料理に地元の伝統的なワイン、そんなセオリーを地で行く美味しさだ。



――――――――――  おすすめ記事一覧  ――――――――――

―――――― おすすめ記事一覧 ――――――



テロワールと天地人①


羊料理


牛肉のタルタル


PAGE TOP
8,000円(税抜)以上ご購入で送料無料キャンペーン中