SALON COLUMN

ドザージュ・ゼロのシャンパーニュと和食

2017.08.28



ドザージュ・ゼロのシャンパーニュと和食

京都の有名ワインショップ「ワイングロッサリー」の美人社長、吉田まさきこさんから久しぶりのメッセージ。「明日の夜、大丈夫でしょうか?」

 

ドキッ! そうであった。それはふた月ほど前のこと。「銀座の下鴨茶寮さんでドザージュ・ゼロのシャンパーニュと和食のマリアージュをします。お時間があればぜひ」とのお誘いを受けたのである。

 

私はふだん、自分の予定をiPhoneとMacのカレンダーで管理してるのだが、フランス出張中バックアップに失敗し、クラウドに残していたデータを消してしまったのである。あらためてカレンダーをみると、よかった、バッティングしている予定はない。それで翌日、意気揚々と銀座へ向かった。

 

 

さて、ドザージュ・ゼロとはいったい何ぞや? 

 

シャンパーニュは瓶熟成後、瓶内に残った澱を取り除くため、デゴルジュマンと呼ばれる作業を行う。澱を一旦瓶口に集めて凍らせ、シャンパーニュに含まれている炭酸ガスの圧力で吹き飛ばすのだ。その時の目減り分を補うと同時に味わいを調整するため、糖を混ぜたリキュールを加える。これがドザージュだ。

 

この時の糖分量に応じて「ブリュット」や「ドゥミセック」など、ラベルには甘辛表示が書き込まれる。ドザージュ・ゼロとはすなわち、糖分をいっさい加えない辛口中の辛口を意味する。

 

今回のイベントのために用意されたドザージュ・ゼロのシャンパーニュは、メニル・シュール・オジェの「ギィ・シャルルマーニュ」、ヴェルテュの「ギィ・ラルマンディエ」、ヴェルズネの「ミシェル・アルヌー」、キュミエールの「ルネ・ジョフロワ」、アイの「ガティノワ」、リリィ・ラ・モンターニュの「ヴィルマール」といった、いずれも名うてのレコルタン・マニピュランばかり。

 

 

通常はどの造り手も自分たちが理想とするドザージュを施していて、ラインナップにドザージュ・ゼロのアイテムはない。そこをまさきこさんが特別にお願いし、小ロットのみ糖分添加なしのドザージュ・ゼロにあつらえてもらったもの。日本限定、ワイングロッサリー限定のシャンパーニュである。

 

会の冒頭でまさきこさんも言われていたが、「ドザージュ・ゼロこそ正義」などという考えは毛頭なく、造り手が施すドザージュ量を彼女自身はリスペクトしている。これはあくまでひとつの可能性を試みるため、造ってもらっているそうだ。

 

昨今、大手メゾンでもドザージュの糖分量を低く抑える傾向にあるのは事実。そもそもシャンパーニュがドザージュを必要とした理由は、フランス最北のワイン産地ゆえ、糖分でも加えなければシャバシャバでギスギスしていて飲めなかったからだ(これに加えて瓶内熟成中の還元という問題もあるのだが、ややこしいので割愛する)。ところが温暖化の影響でブドウがよく熟すようになった結果、ボディはしっかり、酸味はマイルドになり、以前のようにリッターあたり10グラム以上もの糖分を加えずともよくなってきている。

 

ちょっと前置きが長すぎた。

 

舞台となった下鴨茶寮は京都の老舗料亭。5年前に放送作家の小山薫堂さんが経営を引き継ぎ、昨年、東京へ進出。東急プラザ銀座の中に「下鴨茶寮 東のはなれ」と「日本酒バル のまえ」をオープンした。

 

この日の献立は、「ブラウンマッシュルームのムース 鱧のコンソメゼリー 酢橘の泡」「鮪 和牛 炙り」「玉蜀黍の摺り流し 汲み上げ湯葉 トリュフオイル」「焼き鮎 胡瓜のピクルス ゴーヤヨーグルト」「鴨のロースト 焼き茄子と九条葱のピュレ 実山椒」「アールグレイ炊きご飯 帆立 枝豆 トマト 生姜」「羊羹二種」という流れ。

 

素材重視の日本料理だからこそ、すっぴんのドザージュ・ゼロが合うのは道理。とはいえ、中には和牛やら鴨やら、なかなか手強そうな相手もいる。ちなみにこの日のラインナップにロゼはない。

 

そのような中で面白かったのがルネ・ジョフロワのプルミエ・クリュ・キュミエール・ピュールテだった。ピノ・ノワールとピノ・ムニエが半々のブラン・ド・ノワール。最初に注がれた時にはブラン・ド・ノワールらしからぬタイトなボディに戸惑ったものの、時間が経って温度が上がるとともにボディが増し、豊かさが感じられてきた。こうなればこっちのもの。鴨のローストとだって完全に張り合えるではないか。

 

 

 

できれば和牛の時にも、このブラン・ド・ノワールが注がれていれば……と思わぬでもなかったが、和牛と同じ皿に盛られた鮪の炙りは、モンターニュ・ド・ランス北部、ヴェルズネイのブドウ(ピノ・ノワール70%、シャルドネ30%)から造られるミシェル・アルヌーとよいバランスであった。

 

 

かくしてドザージュ・ゼロのシャンパーニュと下鴨茶寮の和食とのマリアージュは成功。だがしかし、ドザージュが施された通常のキュヴェと比較したら、どちらのほうに軍配が上がっただろうかと、新たな興味が湧いてきたりもするのである。

 



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