タコのサラダ
2017.09.04
イタリア、シチリアで出会った料理にタコのサラダがある。「インサラータ・ディ・ポルポ」。訳すとそのまま、タコのサラダだ。郷土料理だけにいろいろな姿があるが、茹でダコを薄切りにして、ニンニク、イタリアンパセリ、塩コショウ、オレガノ、レモン汁、オリーブオイルで風味を整えたものだ。見た目はカルパッチョのようでもあることから、タコのカルパッチョ、あるいはタコのマリネと言いたくもなるが、それは現地の人に強硬に否定された。「タコのサラダ」以外の何物でもないという。
シチリアにいた1ヶ月あまり、このタコのサラダの虜になった。この料理はイワシのマリネとともに、沿岸部を中心にありとあらゆるトラットリアにある名物料理であった。熱を加えてイカ焼き状になったバージョンも食べた。カルパッチョ状に仕上げ並べたあと、熱したフライパンでサンドイッチにでもしたのだろうか、プレスされた「タコのサラダ」は薄く、そして全体が一体化しておりプリッとした食感。変わり種としてこれまた魅力的な一皿だった。
とはいえ基本はシンプルな料理。これに欠かせないのはもちろん地元の美味しいタコ、そして、同じく現地のニンニクとレモンなのではないか気がついた。日本で一般的に流通しているニンニクは辛味や風味が強すぎる。現地のニンニクは少し香りが抑えめで、エレガントだ。そして何より違うのがレモン。本土カンパニア州同様、シチリアもレモンの名産地だ。品種なのか気候なのか、とにかくよく熟していて甘い。日本でよく見かける酸っぱいレモンとは一線を画している。みかんとグレープフルーツを混ぜたような味だ。これを豪快にぎゅうぎゅうと絞ると、同じく名物の力強いエキストラ・バージン・オリーブオイルと一体化した素晴らしいソースになるのだ。今でも暑い日に、キリッと冷えたグリッロとかインツォリアの白ワインを飲むとこのタコのサラダを食べたくなる。