SALON COLUMN

郷愁のアマトリチャーナ

2017.08.28



郷愁のアマトリチャーナ

アマトリチャーナというパスタがある。2016年8月の大地震で有名になってしまった、ローマの北東、ラツィオ州アマトリーチェが発祥と言われている。このパスタ料理はローマの羊飼いが夏にアマトリーチェの高原やってきて、彼らが現地のパスタ料理をローマに持ち帰り料理として発展したという説が有力である。日本におけるアマトリチャーナはトマトと豚肉(ベーコン)に玉ねぎの甘味が乗ったパスタのイメージが定着しているが、そもそもイタリアでトマトが使われるようになったのは歴史的には割と新しい。アマトリチャーナも原型のレシピでもトマトは用いられておらず、それに玉ねぎも使用されていない。

 

現代におけるアマトリチャーナとは一体何者なのか。端的にいうと、グランチャーレ(豚ほほ肉のベーコンで、塩気のほか旨味が豊富)とトマトの酸味で勝負するパスタ料理だ。過剰な甘みは邪道。肉の旨味と塩気、そしてトマトの清涼感が生命線。最後にペコリーノ・ロマーノが色っぽく降臨する。すべてはこの絶妙なバランスの上になり立っている。甘酸っぱく、心震える味だ。

 

そんなアマトリチャーナ、子供の頃に食べたナポリタンの味を思い出さずにはいられない。もちろん、ナポリタンというイタリア料理はないし、それ自体、トマトケチャップの味にすぎない。それでもなぜか、なぜかナポリタンを感じさせてしまうのだ。歴史的に見るとナポリタンは戦後、アメリカから入ってきた料理なのだという。もちろんアメリカにおけるナポリタンも、イタリア移民がルーツであろうと想像できるが、海を越えて、地球の裏側にやってきた料理を食べた日本人がそのオリジナルを食べた時に、「ああ、懐かしいなぁ」と思う感覚、料理って面白いと思う。

 

肉の旨味が乗ったトマトソース。お隣、トスカーナ州の気軽なキアンティとともに楽しんでみる。酸味の調和が見事。幸せなひとときだ。

 

※取材協力・BUCA (ブーカ)



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