SALON COLUMN

稚鮎の串揚げとデュモル・コナー・ピノ・ノワール

2017.08.21



稚鮎の串揚げとデュモル・コナー・ピノ・ノワール

7月7日、七夕の夜。パリから羽田に到着後、家にも戻らず向かった先は、銀座交詢社ビル内の「六覺燈」(ろくかくてい)。大阪に本店をもつ串揚げの名店である。

 

カリフォルニアから「デュモル」の共同経営者、トム・ピルズベリーが来日したのを機に、彼のワインを串揚げとともに楽しもうという趣向。串揚げについては「二度づけ禁止」くらいしか知識がないが、カリフォルニアワインとどのようなマリアージュを見せるのか、楽しみではある。

 

はじめにデュモルについて簡単に説明しておこう。今からちょうど20年前の1997年に、3人のパートナーが趣味的に初めたワイナリーで、冷涼なロシアン・リヴァー・ヴァレーの中でもとくに涼しい海寄りのエリアのブドウを用いたシャルドネとピノ・ノワールを得意としている。

 

現在はシラーやヴィオニエも造り、14年には待望のカベルネ・ソーヴィニヨンがラインナップに加わった。なぜ「待望」かといえば、ワインメーカーのアンディ・スミスは他のワイナリーで過去に2度もロバート・パーカーから100点満点を奪い取ったことのある、カベルネのスペシャリストだからだ。

さてさて、この日の串揚げの数は19品! 車海老に始まり、和牛ヒレ、ホタテ、エンドウ豆…(中略)…ハナニラ、キス、豆腐などなど、最後はチーズで締め。目の前の皿には宮古島の雪塩、山椒塩、六覺燈のオリジナルソース、白ごまペースト、出汁醤油、辛子レモンの薬味やつけだれが並び、素材に応じておすすめのソースが指定される。ソースは他の客と共有しないので、二度づけもオーケーだ。

 

ワインは2種類のシャルドネ、2種類のピノ・ノワール、2種類のカベルネ・ソーヴィニヨン、そしてシラーの全7種。

 

トロピカルフルーツが前面に出て、アルコールが高く、オークフレーバーぷんぷんのシャルドネが跋扈していた時代はカリフォルニアでも終わりを告げ、デュモルのシャルドネもきれいな酸味を基調としたバランスのとれたスタイル。

 

ピノ・ノワールはベーシックなロシアン・リヴァー・ヴァレーこそ、ジューシーな果実味が前面に出て、いかにも新世界なおもむきを呈する一方、海からわずか6キロの距離に位置するジョイロード・ヴィンヤードのピノ・ノワールのみを用いたコナーは、抑えの効いた果実味、伸びやかな酸、シルキーな喉越しで、シャンボール・ミュジニーかヴォルネイのごときエレガンスを感じさせた。

 

カベルネ・ソーヴィニヨンはソノマの単一畑と、ナパ・ヴァレーのふたつの畑のブレンドという2本立て。これが天と地ほどにスタイルを異にするものだった。前者は柔らかな果実味とビロードのようなテクスチャーから、てっきりメルローがブレンドされてるものと勘違いしたほどだが、じつはカベルネ・ソーヴィニヨン100%。後者はより緻密で腰があり、筋肉質で力強い。今味わうならソノマをとるが、10年後はナパのほうがはるかに美味しくなっているはずだ。

 

感動したのはロシアン・リヴァー・ヴァレーのシラー。名うての生産者たちが造るコート・ロティの中にこっそり入れておいても、これがカリフォルニアのシラーと見破れる人は少ないだろう。。

 

さて、実際には19種類の串揚げと7種類のワインを、133通りの組み合わせで試したわけではないのだが、なかでも面白かったのが稚鮎とコナー・ピノ・ノワールの組み合わせ。シャルドネでも試してみたが、鮎の腸(はらわた)の苦味がどうもシャルドネとは相容れない。コナー・ピノ・ノワールは、7パーセントだけ梗が付いたままのブドウを仕込んでいるおかげか、シルキーな中にもじつにキメ細かなタンニン分が感じられ、それが腸の風味と調和するのであった。また鮎にはタデ酢が添えられていたが、これがワインの風味を破壊することもなく、冷涼な気候ゆえのピュアな酸味と、これまた梗のもたらすスパイシーなアフターに同調したのである。

 

 

結局のところ、串揚げがどうのこうのより、素材の美味さ。今が旬の鮎を塩焼きにしても、このようなスタイルのピノ・ノワールなら下手な白ワインより合わせやすいかもしれないな……と、ふと考えた七夕の夜であった。

 

柳 忠之 (やなぎ ただゆき)

ワインジャーナリスト。1965年、横浜生まれ。ワイン専門誌記者を経て、1997年に独立。「Men’s Club」「東京カレンダー」「Figaro Japon」など各種情報誌にワイン関連の記事を寄稿する。専門誌では「Winart」のフランス現地取材をおもに担当。妻は同じくワインジャーナリストの名越康子。池袋の「東武カルチュアスクール」では、夫婦交代でワイン講座を担当している。シャンパーニュ騎士団シュヴァリエ。ボンタン騎士団名誉コマンドゥール。



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