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ボルドーワインの基礎知識|「フランスワインの女王」の秘密とは?

2017.04.19



ボルドーワインの基礎知識|「フランスワインの女王」の秘密とは?

フランスのみならず世界的に有名なボルドーワイン。その名声は、ボルドーの地でのワイン造りの歴史を通して培われた、確かな技術と信頼に裏打ちされたものだと言えるでしょう。
では、ボルドーではいつ頃から、どんなきっかけでワイン産業が発展し、今日のような銘醸地になったのでしょうか?
今回はワイン初心者の人向けに、ボルドーワインの特徴や主な産地、ワイン好きなら誰もが憧れる「5大シャトー」についてなど、「フランスワインの女王」と評されるボルドーワインの魅力をご紹介します。

【目次】
1.ボルドーワインの特徴
2.ボルドーワインの主な産地
3.ボルドーワインの格付け
4.ボルドーワインの5大シャトーとは
5.ボルドーワインがフランスワインの「女王」たるゆえん

ボルドーワインの特徴


ボルドーワインの歴史や代表的な品種など、基礎的な知識についてお伝えします。

●ボルドーワインの地理と歴史
ボルドー地方はフランスの南西部に位置し、温暖な海洋性気候に恵まれ、4世紀ごろからブルゴーニュ地方と並んでフランスを代表する銘醸地として知られていました。
ボルドーは単にワイン産地として優れていただけではありません。ガロンヌ川とドルドーニュ川、そして海へと注ぐジロンド川のおかげでボルドーは港町としても発達し、重要な役割を果たしていました。

1152年、ボルドー地方を含む一帯の地域を支配していたアキテーヌ公国の娘が、のちに英国王ヘンリー2世となる人物と結婚したことで、ボルドーは英国領となりました。ワインの生産には不向きだった英国からの需要により、ボルドーで造られたワインはイギリスへ輸出され、安定したマーケットを得て大いに発展しました。百年戦争の結果、イギリスとの交易がストップした後は、オランダなどとの取引きが盛んになりました。

1855年、ナポレオン3世の時代に行われたパリ万博により、メドック地区の格付けが生まれ、ボルドーワインの名声は不動のものとなります。しかし、19世紀末、ボルドーワインはウドンコ病・ベト病・フィロキセラの被害によって壊滅的なダメージを受け、生産量が激減。市場に粗悪なワインが出回るようになり、ボルドーワインの品質を保つために制定されたのが原産地統制呼称「A.O.C.」でした。A.O.C.とは、ワインの産地、ブドウ品種、栽培・醸造方法などを厳しく定め、そのワインの個性や品質を保証する、世界で初めて作られたワイン法です。この後、多くの国がフランスのA.O.C.を手本にワイン法を作ったことからも、ボルドーワインの世界への影響力がうかがえます。



●ボルドーワインの特徴
ボルドーワインは、単一品種からワインが造られるブルゴーニュとは対照的に、複数のブドウ品種をブレンド(アサンブラージュ)することで、複雑で豊かな味わいを生み出しています。
赤ワイン用品種として代表的なのは、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロー、マルベック、プティ・ヴェルドです。白ワイン用品種として栽培されているのは、セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデルなどです。

ボルドー全域では赤ワインの生産がほとんどを占め、ほぼ全てのワインがA.O.C.ワインです。一般的に、ボルドーワインといえば「力強く渋みがあり、長期熟成向きである」というイメージを持っている人が多いかもしれません。しかしボルドーでは、長期熟成型の高級赤ワインをはじめ、親しみやすい軽やかな赤ワインや爽やかな辛口白ワイン、貴腐ワイン、ロゼワイン、スパークリングワインなどバリエーション豊かなワインが造られています。一部の高級ワインを除けば、リリースされた直後から熟成を待たずに飲めるワインも数多く生産されているのです。

ボルドーワインの主な産地


ボルドーの産地は3つの大きな川に区切られた5つの地域に大別することができます。地域ごとに土壌や栽培されるブドウ品種が異なり、造られるワインのスタイルも違います。

●メドック地区
ジロンド川の左岸に広がり、ボルドー市の北側に位置するのがメドック地区です。砂利質と粘土質が混ざり合った土壌を持っています。ボルドー市に近い上流ほど砂利質が強いため、水はけの良い土壌を好むカベルネ・ソーヴィニヨンが主に栽培されており、下流へ行くほど粘土質が強くなるため、粘土質土壌に適したメルローが多く栽培されています。
メドック地区は赤ワインのみが認められるA.O.C.で、ジロンド川の下流に位置するメドックと上流に位置するオー・メドックとに分かれ、特にオー・メドックのエリア内には、「サンテステフ」「ポイヤック」「サンジュリアン」「マルゴー」など、格付け上位のシャトーが集中しています。
「ポイヤック」や「マルゴー」を名乗れる一部の高級ワインは長期熟成タイプですが、全体的には早飲みワインを生産している地区です。

●グラーヴ地区
グラーヴ地区はガロンヌ川左岸にあり、ボルドー市の南側に位置します。グラーヴとは「砂利」を意味するフランス語で、その名の通りガロンヌ川によってもたらされた小石や砂利に覆われた水はけの良い土壌です。中でも、ボルドー市のすぐ南側にあるペサック・レオニャン地区では、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体にしっかりとしたタンニンの秀逸な赤ワインが造られることから、A.O.C.グラーヴから独立しA.O.C.ペサック・レオニャンを名乗ることが許されています。また、セミヨンやソーヴィニヨン・ブランなどから、芳醇な香りの優れた辛口白ワインも造られています。
ペサック・レオニャンのさらに南のグラーヴでは、メルローを主体にカベルネ・フランなどをブレンドしたなめらかで優しいワインが造られ、メドックやペサック・レオニャンに比べると若いうちから楽しめます。また、セミヨンを主体にソーヴィニヨン・ブランをブレンドして造られる辛口白ワイン、甘口白ワインも造られており、バリエーション豊かなワインを楽しむことができる地区です。

●右岸地区
ドルドーニュ川右岸に位置し、ブドウ畑が世界遺産にも登録されている美しい古都・サンテミリオンを中心に広がる右岸地区では、石灰質と粘土質の土壌に向くメルローを主体とした、長期熟成型で豊かなコクを持つ素晴らしい赤ワインが造られています。その北西部にはポムロール地区、サンテミリオンの名が付けられた4つの地区(サンテミリオン衛星地区)があり、いずれも粘土石灰質の土壌でメルローを主体とした、力強さとなめらかさを併せ持つしっかりとした赤ワインが造られています。
サンテミリオンには比較的規模の小さいシャトーが密集しており、メドックと並んで世界的に高い評価を受ける、優れた銘柄を数多く産出しています。

●アントル・ドゥ・メール地区
ガロンヌ川とドルドーニュ川に挟まれた広大な地域で、アントル・ドゥ・メールとは「二つの海の間」という意味です。粘土石灰質の土壌で、メルローを主体とした丸みのある赤ワインと、ソーヴィニヨン・ブランとセミヨンをブレンドした爽やかな白ワインが造られています。比較的手頃な価格で手に入る質の良いワインが多く、特にフランスのA.O.C.白ワイン産地としては有数の規模を誇ります。

●ソーテルヌ&バルサック地区
ガロンヌ川左岸のボルドー市から見て南東部に位置し、「ソーテルヌ」をはじめと貴腐ワインを産出する銘醸地です。ソーテルヌ地区は砂利質と粘土混じりの石灰質土壌で、シロン川を挟んで対岸にあるバルサック地区は石灰岩土壌です。
貴腐菌が発生する独特の気候条件のもと、セミヨンを主体とした貴腐ワインが造られています。バルサックと比較すると、ソーテルヌのほうが起伏に富んだ標高の高い地区で、その中でも最も高い丘の頂上にあるのが、ソーテルヌを代表する「シャトー・ディケム」です。ソーテルヌは世界三大貴腐ワインの一つとされ、白ワインとしては類まれな長期熟成型で、豊かな芳香と奥深いコクがあり、黄金色をしています。

ボルドーワインの格付け


ボルドーワインの格付け制度は、ナポレオン3世の命により、当時のボルドーワインの主力産地であった、メドックとソーテルヌの2つの地区で制定されたのが始まりです。

●シャトー=ワイナリーに対して格付けを行う
ブルゴーニュ地方の場合、ブドウ畑を対象として格付けがなされているため、同じ格付けのワイン銘柄であっても、所有者が違えばそれぞれ別のワインがリリースされます。これに対してボルドーでは、一つの畑を一つの醸造所(=シャトー)が所有しており、シャトーに対する格付けが、すなわちワイン銘柄を特定するものとなります。
1855年にメドック地区・ソーテルヌ地区の格付けが発表されたのち、1953年にグラーヴ地区、1954年にサンテミリオン地区でもそれぞれ格付けが制定されたといいます。
それぞれの地区で独自の格付けとなっており、ワインの種類や見直し時期などは地区ごとに異なります。順に解説しましょう。

●メドック地区・ソーテルヌ地区の格付け
メドックとソーテルヌの格付けは、制定当時は第2級であった「シャトー・ムートン・ロートシルト」が1973年に第1級に昇級した一度のみ改定され、それ以外は全く変動していません。
時代が過ぎていく中でシャトーの体制や造られるワインにも変化があり、その時代にあった格付けに見直されるべきだという意見もあります。実際に、1855年の格付けとは全く異なる独自の格付けを行い、書籍などで発表するワイン批評家たちもいます。捉え方は人それぞれですが、150年以上昔から自然災害や戦争などの苦難を乗り越えてワインを造り続け、シャトーの名を守ってきた人々に対し、敬意を払うことは忘れないほうが良いでしょう。

メドックの格付けは赤ワインのみで、メドックから60シャトー、ペサック・レオニャンから1シャトーの計61シャトーのワインが選ばれ、第1級(プルミエ・クリュ)から第5級(サンキエム・クリュ)まで、等級は5つに分けられています。
これ以外に、小規模ながら秀逸なワインを生産するシャトーの格付けである「クリュ・アルティザン」、古くからボルドーの富裕層が取得し、優良な区画と認められていた「クリュ・ブルジョワ」という格付けも存在します。ただ、「クリュ・ブルジョワ」については、過去に格付けの取り消しが行われたこともあり、格付けとしての性質を失っています。

ソーテルヌの格付けは甘口白ワインのみで、ソーテルヌ、バルサックから計27シャトーが選ばれ、シャトー・ディケムのみを別格の特1級(プルミエ・クリュ・シュペリュール)とし、その後に続く1級(プルミエ・クリュ)、2級(ドゥジェム・クリュ)の3つの等級に分けられています。

●グラーヴ地区の格付け
制定後、1959年にわずかに修正され、「シャトー・オー・ブリオン」を筆頭に16シャトーの赤・白ワインが選ばれました。全てのアペラシオンはペサック・レオニャンで、「シャトー・オー・ブリオン」はメドックとグラーヴの両方の格付けに選出されています。生産が中止になったり、名称変更されたりした銘柄もありますが、それ以外の改定は行われていません。

●サンテミリオン地区の格付け
メドックなどその他の地区との大きな違いは10年に一度見直しがあるということです。最高クラスである第1特別級A(プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA)、第2特別級B(プルミエ・グラン・クリュ・クラッセB)、特別級(グラン・クリュ・クラッセ)に分けられていますが、改定により変動があります。
2006年に、一部のシャトーが選考委員会の公平性を訴えたことから、一度発表された格付けが見直されるという騒動がありました。2012年に決定された最新の格付けでは、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセAに4シャトー、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセBに14シャトー、グラン・クリュ・クラッセに64シャトーの、合計82シャトーが選ばれています。

●格付け制度がもたらすメリット
ワインの格付け制度は、生産者がそれぞれのアペラシオンの伝統的なワイン造りのスタイルや個性を守り、品質の水準を維持することにつながります。また、消費者にとっては、格付けによってワインの品質を推し量ることができるというメリットがあります。

その一方で、格付け制度はないものの、秀逸なワインとして有名なのが「ポムロール」のワインです。メドックなどと比べると小規模なシャトーが多く、「シンデレラワイン」と呼ばれることもあります。特に評価が高いワインに「シャトー・ペトリュス」「ル・パン」など、格付けされている偉大なワインにも勝るとも劣らない素晴らしいワインが存在します。

ボルドーワインの5大シャトーとは


ワインに興味がある人なら、誰もがきっと憧れるであろう「5大シャトー」のワインについて、それぞれの個性や味わいの奥深い魅力をご紹介します。

●世界のトップに君臨するワイン
そもそも「5大シャトー」とはどんなワインなのでしょうか?1855年のメドックの格付けで第1級に選ばれた「シャトー・ラフィット」「シャトー・ラトゥール」「シャトー・マルゴー」「シャトー・オー・ブリオン」の4つに、1973年に第1級に昇格した「シャトー・ムートン・ロートシルト」を加えた5つのシャトーの偉大なワインのことで、いずれも長期熟成に耐える素晴らしい品質の赤ワインです。
5大シャトーは、何百年もの間、ワイン造りにかけるひたむきな情熱と極上のテロワールに支えられて珠玉のワインを生み出し、今日に至るまで多くの人を魅了してやみません。

●シャトー・ラフィット・ロートシルト
5大シャトーの中でもしばしば筆頭に挙げられ、ルイ15世が愛した「王のワイン」として知られているのが「ラフィット・ロートシルト」。カベルネ・ソーヴィニヨンの比率が高く、濃密なタンニンを持ちながらも、その繊細さと気品のある優雅さから5大シャトーの中で最もエレガントであると評されるワインです。
その味わいが花開くまでに長期の熟成を要することも特徴で、10年~20年、あるいはそれ以上の熟成によって、ようやくその真価を発揮します。格付け制定当時から今に至るまで、常に高い評価を獲得し続けてきたことからも、「王のワイン」の品格の高さがわかります。

●シャトー・ラトゥール
「ラトゥール」とは、フランス語で「塔」を意味します。シャトーのシンボルであり、ラベルにも描かれている塔は、1300年代中頃に要塞として築かれたもので、現在は撤去され目にすることができません。
5大シャトーの中でも、ラトゥールのワインは最も男性的であるといわれ、圧倒的な力強さと凝縮感が持ち味です。また、骨格がしっかりしているため長命で、50年以上寝かせたラトゥールの円熟した重厚な味わいは見事なもの。
畑がジロンド川の近くに位置し、寒さや霜の被害から守られていることや、いち早く近代的な設備を取り入れたことから、ヴィンテージに左右されにくく安定したワインを造り続けている点もシャトーの長所と言えるでしょう。

●シャトー・ムートン・ロートシルト
第2級から異例の昇格を果たし、第1級となったシャトーが「ムートン・ロートシルト」です。1945年以降、ワインのラベルを著名な画家やデザイナーに依頼しており、毎年変わるアーティスティックなラベルデザインでも注目を浴びています。
ワインの味わいは5大シャトーの中で最も絢爛豪華であると表現され、濃厚さやふくよかさに加え、瓶熟によって獣肉を思わせるエキゾチックな香りが現れてくることも魅力の一つです。

●シャトー・マルゴー
ラベルに描かれている城館のように、造られるワインもエレガントな「シャトー・マルゴー」。女性的といわれるワインは、香りの華やかさや繊細な味わいが魅力です。芳醇な香りは熟成によりさらに複雑さを増し、絶妙なバランスを生み出します。
1970年代には不作が続き、区画の所有者が入れ変わり、低迷しかけた苦しいときもありました。そこで、マルゴーでは品質向上のため大規模な設備投資を行い、ブドウ選果や醸造などにおいて改革を推し進めた結果、1978年には復活を遂げ、再び素晴らしいワインを生み出すことができるようになったのです。
「ボルドーの宝石」ともたたえられるマルゴーは、アーネスト・ヘミングウェイやチャールズ・チャップリンなど、多くの著名人に愛されたことでも有名です。

●シャトー・オー・ブリオン
オー・ブリオンの名声は、1600年代からヨーロッパ全土に知れ渡っていたといわれています。1814年のウィーン会議の際、とっておきの宮廷料理とともに各国の代表に振る舞われ、そのおいしさが大評判で、敗戦国であったにもかかわらずフランスはほとんど領土を失わずに済んだというエピソードも残ります。
5大シャトーの中の他のワインと比べメルローの比率が高めなので、力強さよりもなめらかさや、まろやかな味わいを感じることができます。熟成により豊かな香りと複雑さは増しますが、5大シャトーの中でも早くから飲みごろを迎え、楽しめるワインでもあります。



ボルドーワインがフランスワインの「女王」たるゆえん


しばしば「力強い」「重厚な」と表現されるボルドーワイン。タンニンよりも軽やかな酸味や香りの華やかさが持ち味とされるブルゴーニュのワインと比較すると、どちらかというと男性的な性格を持つと感じる人が多いでしょう。
ボルドーワインが「女王」と表現される理由は諸説あります。一例を挙げると、単一品種で造られるブルゴーニュと違い、複数のブドウ品種をブレンドして生み出されるボルドーワインには複雑さや繊細な魅力があるということ、また、熟成とともに味わいが微妙に変化する点を女性的と捉える見方があります。
もちろん、感じ方は人それぞれで異なります。ぜひボルドーワインを味わって、その奥深い魅力を堪能してください。



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